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ウィルフレード・プリエト&イグナシオ・ウリアルテ:I Am Making Art
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 29日

Wilfredo Prieto “Untitled (White library)” (2004-2006); White books, shelves, tables and chairs. View of the installation at 1st ingapore Biennale. Courtesy NoguerasBlanchard, Barcelona and Taka Ishii Gallery Collection of Museum of Old and New, Tasmania copyright(c) Wilfredo Prieto

Ignacio Uriarte “Xonox scribbling” (2008); Technical fibre-tip pen on paper, 98 pieces, 40 x 30 cm each Courtesy NoguerasBlanchard, Barcelona and Taka Ishii Gallery copyright(c) Ignacio Uriarte

今回の二人展のタイトル、「I Am Making Art」は、ジョン・バルデサリが1971年発表したフィルム作品から引用されたものです。

プリエトは日常生活におけるシンプルな要素(事柄)を用いることで、皮肉とユーモアを交えながら言葉を「現実」に変質させ、静的でありながらも同時に衝撃的でもある、強いメッセージを鑑賞者に投げかけます。

プリエトの作品は特定の場所のために作られた作品形式(site-specific installations) をとることが多く、例えば熟したマンゴーを緑色に塗ることにより、それらを永続的状態に留め置く作品、「Optical Art」(1999) がその好例として挙げられます。通常のページの代わりに白紙のページを綴じた本を用いた、「Untitled (White library)」(2004-2006) では、沈黙は千の言葉と同等か、もしくはそれ以上の価値があることを示唆しています。「Scale of values」(2001)では、複数のプラスチックカップをラム、ビール、ワイン、ソフトドリンクや水で満たすことにより、価値の尺度を視覚的に提示しました。そして「Yes/No」(2002)では、扇風機の単純な上・下(Yes)、右・左(No)を人の顔の動きに見立て、控えめではあるけれども理解可能な言語として機能させました。

ウィルフレード・プリエトは1978年にキューバのSancti-Spiritusに生まれ、現在はスペイン・バルセロナにて活動しています。代表的な個展としてS.M.A.K. ゲント(2008)、 Kadist Art Foundation パリ(2006)、MUSAC レオン(2005)、グループ展ではP.S.1 MOMA ニューヨーク(2008)、Fondazione Sandretto Re Rebaudengo トリノ(2008)、第52回ヴェネチアビエンナーレ・イタリア-ラテンアメリカパビリオン(2007)、Irish Museum of Modern Art ダブリン(2005)、などが挙げられます。また、プリエトは2008年度のフリーズ・アートフェア、カルティエ・アワードの受賞者でもあります。

私の原点はいつもの会社でのルーティーンワークで生まれる、ほんの少しの創造的な瞬間です。そこにアートの側面はわずかにしか存在しないのですが。
- イグナシオ・ウリアルテ

ウリアルテの代表的な作品として、壁に裏表が反対となった封筒が貼られた作品「Envelope」(2003)や、折り目をつけた21枚のA4サイズ紙を、1.5cmずつ高さを上げたものを1列。逆に1.5cmずつ高さを下げたものを一列、対となる壁にそれぞれを配置し、連続する折り目がすべての紙を横断して線を描きだす作品「A line up and down and a A-4 sheet」(2004)や、「進む(vorwärts)」と「戻る(rückwärts)」を意味する文字がタイプライターによってスクリーンに打たれる映像作品「vorwärts rückwärts」(2005)、Castell 9000シリーズの計15種類の硬度の鉛筆(6hから8b)一本一本を用いて作成したモノクローム・ドローイング作品「From 6h to 8b」(2007)などが挙げられます。

イグナシオ・ウリアルテは1972に生まれ、ドイツ・クレーフェルトで育ちました。1992年から1995年にかけて、マドリッドとマンハイムにて経営管理学を学び、その後シーメンス、キャノン、Interlub、Agilent Technologiesなど、ドイツ、スペイン、メキシコ各国で働き、1998年から2001年にかけて、メキシコ・グアダラハラにてオーディオ・ヴィジュアル・アートを学びます。2003年11月を最後に仕事を辞めたウリアルテは、その後自身が名付けた「オフィス・アート」へと傾倒します。2004年から2006年にかけ、Hangar Barcelonaのアーティスト・レジデンシー・プログラムに参加。2007年より活動の拠点をベルリンに移しています。美術館での個展として、 CGAC サンティアゴ・デ・コンポステーラ(2007)、Laboratorio 987、MUSAC レオン(2008)、Centro Huarte de Arte Contemporáneo パンプローナ(2008)などが挙げられます。

タカ・イシイギャラリー東京と京都、2つのスペースで行われる今回の合同展では、プリエトとウリアルテの様々なメディアを用いた新作・旧作を展示いたします。

全文提供: タカ・イシイギャラリー

最終更新 2009年 7月 31日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


たとえば会場中央に展示されているプリエトの作品は延長コードの端と端を円形に繋げ合わせたもので、今や珍しいスライド映写機で壁面に映し出されるウリアルテの作品はボールペンを組み合わせてローマ数字の形を作り出すというものだ。日常的な事物を用いたこれらの作品はきわめて軽やかであり、一方で二人に共通するのは、それらをいかにして〈作品〉に昇華するか、そこに至るまでの徹底があるという点である。だから行なっていることはシンプルだが洗練されている。


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