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江川純太:選択が迫る。後ろはみえない。僕は掴んだ右手を眺める。
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 10月 15日

江川純太
あなたの過去を想像する。
キャンバスに油彩
116.7x116.7cm 2013年

白いキャンバスに油絵具の塊をのせ、それを削ぎ落したり、のばしたり、隣りあった色彩を筆先で丁寧につないだりしながら、江川純太(1978年神奈川県生まれ)は独特の抽象絵画を勢いよく描いていきます。やがてどこかの境界を越えると筆をおき、作品が完成します。画面のなかの色とりどりの空間には、日々の体験から得られる作家の思いや記憶がこめられ、筆跡や色彩のまじわりには、彼が画布のまえで過ごした鮮やかな時間が刻まれています。

週一度の制作日を設け、江川純太は定期的に作品制作を続けています。ある日、アトリエから戻った彼は妻に仕上がりについて訊かれ、「まあまあ」と答えました。謙遜の意味もあって、彼はいつもそのように答えていたのです。妻はその返事をきくとこう言いました。「まあまあの絵なんて誰もみたくないよね」。それ以来、江川は制作により集中できるようになり、自分で失敗と認める作品を描くことが少なくなったといいます。

展覧会タイトル「選択が迫る。後ろはみえない。僕は掴んだ右手を眺める。」は、描くという行動の最中にあられわるダイナミックな瞬間とスリリングな展開を彷彿とさせます。大きな時間が小さな瞬間の積み重ねによってできるならば、その瞬間を逃さずにいたいという作家の意思が、そこにはこめられています。多忙な現代社会のなかで、江川純太の作品は日常の忘れられていく美しいひとときをとらえて、みる者の心の奥へと沁み込んでいくでしょう。

本展では鍵穴を覗くような構図の絵画から画面全体に模様がひろがる絵画、ストライプの上に描く実験的な作品など大小20点あまりのバラエティに富んだ作品を展示し、抽象表現にかける江川純太の意欲的な制作姿勢を発表いたします。この機会にぜひご高覧ください。

[作家プロフィール]
江川 純太(えがわ・じゅんた)

1978年 神奈川県生まれ
2003年 多摩美術大学絵画学科日本画専攻卒業

主な展覧会
2010年 OVER TONE II(神奈川県民ホールギャラリー)
2012年 トーキョーワンダーウォール2012(東京都現代美術館)
2013年 VOCA展2013 現代美術の展望─新しい平面の作家たち(上野の森美術館)
2013年 あなたは見ている。僕は何処か遠くのことを考えていた。(トーキョーワンダーサイト本郷)

主な受賞
2008年 シェル美術賞2008 入選
2010年/2011年 トーキョーワンダーウォール2010 入選 トーキョーワンダーウォール2011 入選
2012年 第7回大黒屋現代アート公募展 入選
2012年 トーキョーワンダーウォール2012 トーキョーワンダーウォール賞受賞
2012年 第25回ホルベインスカラシップ


全文提供:eitoeiko
会期:2013年10月19日(土)~2013年11月19日(土)
時間:12:00ー19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:eitoeiko
最終更新 2013年 10月 19日
 

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