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建築以前、建築以後
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 27日

(写真:上・左)菊竹清訓|海上都市 全体模型|1963|photo / 村井修 (写真:上・右)伊東豊雄|ダイクマン中央図書館(ノルウェー・オスロ市)|全体模型1/500|2009|photo / 大橋富夫 (写真:下・左)妹島和世|犬島アートプロジェクト(岡山)|全体模型 1/50|2009|photo / 妹島和世建築設計事務所 (写真:下・中央)西沢立衛|ガーデンアンドハウス(東京)|スタディー模型1/100|2006|photo / 鈴木研一 (写真:下・右)Kazuyo Sejima+Ryue Nishizawa|SANAA|スイス連邦工科大学ローザンヌ校ロレックス・ラーニング・センター全体模型 1/50|2007|photo / 鈴木研一 画像提供:小山登美夫ギャラリー

本展は、4人と1ユニット(菊竹清訓、伊東豊雄、妹島和世、西沢立衛、SANAA)の日本人建築家が作成したドローイングや模型を中心とした展覧会です。展示作品の大部分はアンビルドもしくは現在進行中のプロジェクトに関するものになっています。建築家が設計作業の過程で作るドローイングや模型は、まだ実在しない建物や空間のリアリティを仮想的に構築するものであり、その意味で〈未だ建築にならざるもの〉だと言えます。本展はこの〈未だ建築にならざるもの〉が持つ表象としての可能性と多様な展開を追うものです。 菊竹清訓は1950年代から現在まで続く海上都市のコンセプト・スケッチと模型を展示します。菊竹は【海上に浮かぶ都市】という建築の通念を超えたコンセプトを、その各時代から未来へと照射されたテクノロジーの臨界点で実現し、人間環境の未来を探り続けてきました。本展ではその出発点である「海上都市1958」から1993年の「海上リニア都市」までのドローイングを中心に、ひとりの建築家の想像力の変遷を検証します。 伊東豊雄は今春行われたノルウェー・オスロ市の「ダイクマン中央図書館」の設計コンペ案に関する模型とドローイングを展示します。伊東の設計プロセスは極めて集団的です。彼がコンセプトの核となる言葉を提示し、そこから集団的な検討作業を通じて、見えないかたちへの方向性を模索していきます。その過程は実に刺激的です。伊東の手によるスケッチやメモの数々は、その海図なき航海を目的地へと導く役割を果たしています。 妹島和世は現在、岡山県の犬島で進行中の「犬島アートプロジェクト」の模型を、西沢立衛は都内で進行中の「ガーデンアンドハウス」と香川県の豊島に建設が予定されている美術館「t-project」の模型を、そして妹島和世と西沢立衛によるSANAAは、スイスで建設中の「スイス連邦工科大学ローザンヌ校ロレックス・ラーニング・センター」の模型をそれぞれ展示します。彼らは設計作業のなかで、言語化や概念化が不可能な空間のバリエーションを精査するために膨大な量のスタディ模型を作成します。模型は設計プロセスの物資的ドキュメントであると同時に、絶えず変成し続ける生命体のような魅力を放っています。 世代の異なる4人の建築家は戦後日本の建築界においてひとつの系譜を形作っています。本展は約50年のタイムスパンのなかでこの系譜を再検証する試みにもなっています。国際的に高い評価を得ている建築家たちが生み出した、現実の建築物とは別の世界の豊かな広がりを、ぜひこの機会にご高覧下さい。

全文提供: 小山登美夫ギャラリー

最終更新 2009年 8月 01日
 

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