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変成態-リアルな現代の物質性:Vol.4 東恩納裕一
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 21日

画像提供:gallery αM copyright(c) Yuichi HIGASHIONNA

「皮膜-生と死」
東恩納の作品は痛覚に訴えるものがある。カムフラージュとしてのデコレーションは底抜けに甘くその場を覆うのだが、その横ではテーピングは解け、蛍光灯やそれをつなぐ結束バンド等がそのままに露出していてわれわれの眼差しを強く射るだろう。そして花はスプレーペイントで影と化し、少女たちの夢見をする鏡はミラーボールとして空虚に回転する。その徹底的な皮膜的な演出の中で、モノはその実体を留めずに、他のものとの関係の中で解消しようとする。それはかつての70年代からの「高度経済成長」以来のわれわれのリアリティを先鋭に代表するものとしてのサンリオなど少女文化に見られる、仮想の欧米文化の擬態である。フェンスのような仕切りで閉じられている、安っぽいそのフーゾクのような場。そしてそれがめくれていて、さらにその薄いラップ状の膜は何重にも存在していることが示されている。しかし彼の造形空間は薄いだけでなく、どこかに見えない肉体が存在しているのだ。

それは例えてみればフランシス・ベーコンの画中の人体がさらに消えていった果てのような、さんざめくような凶暴さが遠くに聞こえるのだ。ただしここではわれわれの周囲の既成品が集積されている。全てのものは変換してしまっているし、変態する可能性を秘めている。ここにおそらくは絵画も彫刻も区別は無いだろう。むしろ絵画も彫刻も異なる意味を付与されて再組織化されているのではあるまいか。今回の変成態の作家の中では世代も異なり、あえて自らの文化の悪趣味という毒をも食むかのようなデモーニッシュな部分を持つ点で異質な作家ではあるが、むしろ今回のような物質感の変容の中であえて見直してみたいとおもう現代性を秘めているだろう。-「変成態-リアルな現代の物質性」Vol.4 東恩納裕一:ゲストキュレーター/天野一夫 (豊田市美術館チーフキュレーター)
ここ数年、制作・展示を通して私が目指していること、それは、私の抱える、どちらかと言えばネガティブな感情(違和感や不気味さ)を、ユーモア、痛快・セクシー、かつ強度に満ちたポジティブなベクトルに変換しようとするものです。今回のαMでの個展では、大学運営の非営利のギャラリーということもあり、自分にとっても実験的な新作を含めて、従来から制作している蛍光灯作品、絵画、インスタレーションを、会場空間に同時多発的に展開するプランを検討中です。(コメント:東恩納裕一)
東恩納裕一 ひがしおんな・ゆういち
1951年東京都生まれ。90年代はじめから日常に遍在する “ファンシーなもの”をモチーフに、そこに潜む「不気味さ」を表現する。代表作としてシャンデリアシリーズ、造花やチェーンをスプレーペイントで型取ったFL(Flower)シリーズ他。最近の主な個展では、2008年個展(マリアン・ボエスキーギャラリー プロジェクトルーム、ニューヨーク)、2008年個展(ギャラリーM、愛知)、2003年「Light Bright Picnic」(世田谷美術館廊下、東京)。

 

全文提供: gallery αM

最終更新 2009年 9月 12日
 

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