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アンドリュー・ギルバート+三嶋章義
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 9月 02日

 

今回日本での展覧会初参加となるスコットランド出身のアンドリュー・ギルバート(b.1980)はエディンバラ大学で美術を専攻した後、欧米を中心に数々の展覧会に出展するほか、プラハのアーティスト・イン・レジデンス「Meet Factory」への参加、ロンドンのキャンバウェル大学でのレクチャー「ヴェズレーからウルンディ〜十字軍初遠征からズールー戦争まで〜」を行うなど、精力的に活動を続けております。幼い頃より戦争史に興味があったというギルバートは、エディンバラ大学在学中に原始主義、民族文化について学び、過去の人類の悲惨な歴史を戯画や寓話としてユーモラスに絵画の中に再現する事で、未だ戦争や反乱が止まない現代社会に提示しています。例えば、過去の作品では、植民地時代にアフリカ少数民族であるズールー族が英国軍に勝利したことがあるという史実からこれらの可逆性に着目し、植民者の横暴や残忍さを風刺したシリーズを発表しています。本展に出展される絵画の中には、鳥を英国軍人に戯画したものや、架空のアフリカ貴族、欧米化した着物美人やキノコ頭の鎧武者など、様々なキャラクターが偶像として登場します。

三嶋章義(b.1978)は、これまでに戦後3世代における立場や役割の移行を表した個展「QUARTER」(2006)、人類の根源的な繋がりを見つめ直した「FAMILY」(2009)を通し、栄華とカタストロフィーの反復に晒されても持続する普遍性をテーマとした作品を発表してきました。昨年夏にドイツのギャラリーGalerie Lena Brüningにて開催された個展「AWAKING HYPNOSIS(催眠覚醒)」では、東北大震災に対応して、ある時点をきっかけに幻と化したかつての栄光、それとは反対に退廃的現実の中に残る崇高性、その両義を持つものとしての原始的性質に着目し、人間の前進する根源的なエネルギーを表したシリーズを発表しました。その中でも彼の近作を象徴する作品「Indigo Children」は、画面中央には黒い霧に包まれた巨大な塔がそびえ立ち、バベルの塔崩壊を連想させるような不吉な緊張感を孕みますが、アメリカの超心理学者ナンシー・アン・タッペから引用したタイトルの通り、未来に起こりうる災難、変革を乗り越えて生きていく新しい子供達という前向きな思いが込められています。本展では、今年の4月にドイツのGalerie Nagel Draxler のプロジェクトスペースにて発表したシリーズ「SHOGON」に引き続き、日本の伝統美をベースにグローバルな美学を追求した新作を発表致します。

本展覧会は、まったく異なる文化言語を持つアンドリュー・ギルバートと三嶋章義の作品に共通して含まれるフィクショナルな民族文化、歴史、神話へのアプローチに着目し、改めて人間の存在意義、未来への可能性を問う事を目的としています。

本展に寄せて、8月31日(土)18:00~、ギルバートも初の来日を果たし、アーティストを囲んでオープニングレセプションを行います。本展を皆様にご高覧頂ければ幸いです。


全文提供:NANZUKA
会期:2013年8月31日(土)~2013年9月28日(土)
時間:11:00 -19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:NANZUKA
最終更新 2013年 8月 31日
 

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