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Published: August 23 2013 |
私はずっと囚われていた、薄っぺらい表皮という境界の存在に。 世界と私を隔てているそれは、まるで私という個人があるかのように思わせてくれる。 そんな境界にしがみつき、その輪郭に歓びを覚える時もあれば、その境界故に孤独と不安に駆られる時もあった。 薄っぺらい表皮への執着に翻弄されていたのだ。
彼女の描く塗り重ねられた水面のように、世界には何層もの境界が意図して作られている。 沢山の層が描かれたキャンバス、最後に彼女の刺繍糸が全ての境界を貫く。 何層もの水の表皮を彼女の糸は繋いで行く、それは元々繋がっていたのか、それとも糸に導かれて繋がるのか。 彼女の描く世界では、万物は水のように流れ、常に変化し、確固たるものなど存在しない。
熱は冷め、形あるものは崩れるという摂理、自然の法則がある。 この宇宙を構成する全てのものは、分子がお互いに振動、干渉しあうことによって秩序が保たれているだけなのだ。 それは、私達と世界を分つ皮膚でさえも。 平均を保つかのように死滅と再生を繰り返しているため、人はそれを境界と錯覚してしまう。
そう、境界など何処にもなかったのだ。 宇宙も人も自然も全てが同じサイクルの中にあり、一見すると流れに逆らってみえる事柄でさえも 大きな流れとして見ると緩やかに移ろい、そしてより最適な状態に移行しているのだ。 彼女の描く水面を覗き込んだ時、境界という幻想に生きていた自分が何とも哀れで、それでいて救われた気さえした。(Gallery Introart 橋本)
[作家コメント] 絶え間なく流れて、流れて、たまに淀み、でも留まらず、また流れて。 わたしたちの世界も体も細胞も分子も、すべてのあれやこれは流れる川の水のよう。 何度も何度も生まれ変わり入れ替わり、保たれ。その流れにはどんな隔たりも境界もなく。水はただ光り、凪ぐ海へとつづく。 (佐藤文香)
[作家プロフィール] 佐藤文香(Fumika Sato) 画家(油彩)
1983 愛知県出身在住 2006 神戸学院大学 人文学部人間文化学科卒業
個展 2009 個展 "f decide morrer"@ギャラリーイントラート 2010 個展 "forget me not"@ギャラリーイントラート 2011 個展 "The epidermis of deep water 深い水の表皮"@ギャラリーイントラート
2011 アートフェア出展 エマージングディレクター#004@スパイラル青山 ギャラリーイントラートウォール
2012 個展 "刺繍糸が織り成す世界"@名古屋松坂屋画廊 個展 "Vortex"@ギャラリーイントラート アートフェア出展ART NAGOYA 2012@ウエスティンキャッスルホテル アートフェア出展ART MARCHE 2012@神戸メリケンパークオリエンタルホテル 個展 "purpure"@GALLERY SPEAK FOR
グループ展 2010.4 "いねむり"@galleryIntroart 2010.10 名古屋港アートフェスティバル 2010.12 "白展"@galleryIntroart 審査員特別賞 2013.3 "CHOICES FOR GIFTS 4"@GALLERY SPEAK FOR
オープニングレセプション 8月31日(土) 19:00〜 ※ギャラリートーク 19:30〜
全文提供:Gallery Introart
会期:2013.8.29~2013.9.29 時間:13:00 - 20:00 Closed on Mondays 会場:Gallery Introart
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Last Updated on August 29 2013 |