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プレイ・ルーム:黒川知希 / マーティン・マニグ / 松橋萌
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 11日

黒川知希≪Home Run≫2009年|1000x1000 mm|Acrylic on canvas|画像提供:ナンヅカアンダーグラウンド | copyright(c) Tomoki KUROKAWA

マーティン・マニグ≪Meckerecke≫2008年|2000x2000 mm|Oil and Tempera on canvas|画像提供:ナンヅカアンダーグラウンド | copyright(c) Martin Mannig

松橋萌≪なわとび≫2004年|1150x900 mm|Acrylic and oil on canvas|画像提供:ナンヅカアンダーグラウンド | copyright(c) Moe Matsuhashi

今回の企画展では、芸術における「童心」をテーマに、黒川知希、マーティン・マニグ、松橋萌の3人のアーティストをピックアップいたします。 黒川知希は、1975年生まれ、美術館と図書館の往復による“自習”で、ペインティングを学んだアーティストです。世の中にゴミとして捨てられている無数のイメージの中から、自らが発見した“決定的瞬間”を、ウィットに富んだ画面に描き上げるその作品は、カニン・ウエストのブログにおいて「new talent doing big things in Japan」と紹介されるなど、国内外で高い評価を得ています。 ドイツ出身のペインター、マーティン・マニグはドレスデン美術大学に学び、「ドレスデン派」若手のホープとして、世界各地で高い注目を集めているアーティストです。1974年にフライブルグに生まれ、その後青春期にドイツ統合を経験したマーティンは、古典的な絵画の強度を保ちつつも、映画やアニメーション、漫画、音楽などのサブカルチャー的な要素を巧みに取り入れた、魅力溢れる作品を生み出しています。幾層にも重ねて描かれるマーティンの絵画は、そのモチーフこそ童心に基づきながらも、決して立ち止まる事のない人間の営みや、その背後で忘れ去れていく歴史などを表しています。 松橋萌は、1985年生まれ、今年多摩美術大学を卒業したばかりのニュータレントです。絵画と立体、それらの組み合わせによるインスタレーションを得意とするその作品は、何気ない日常生活の中に起こる“ちょっとした出来事”や“ふとした瞬間に思い出される記憶”を膨らませたイメージの結晶です。まるで子供の創作活動のように初期衝動に忠実であろうとする松橋の姿勢は、芸術とは何か、何のために表現するのか、という根本的な問いに対して、無意識のうちに力強い回答を提示しているかのようです。 無心の表現への関心および研究は、20世紀初頭、パウルクレーやピカソ、ミロ、カンディンスキー、そしてデュブッフェといった芸術家たちによって進められてきました。芸術家たちにとって、邪念を如何に排除して作品を製作するかは、崇高な芸術を勝ち取るための重要な課題でした。彼らは、子供や障害者などの表現を研究する事よって、人間の文明的な営みの中でなぜ文化が必要とされ続けているのか、その答えを探ろうとしたのです。 ここに見る三人のアーティストたちは、コンテンポラリーアートの世界において最重要ファクターの一つとされる、“ある種の計算”から距離を置くことによって、自らの聖域を獲得している杞憂な存在です。ある種の計算とは、ここでは「オリジナリティーを証明するためのコンセプト作り」と言い替える事ができますが、彼らはそうした労力に身を割くデメリットも承知しているのです。

「芸術とは心楽しい形式をつくる試みである」(ハーバート・リード)

※全文提供:  ナンヅカアンダーグラウンド

最終更新 2009年 8月 22日
 

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