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Hirofumi Katayama: Facts in Flatness
Events
Published: June 12 2013

Hirofumi Katayama
no.1052
2013
type C print
(c) Hirofumi Katayama Courtesy of TARO NASU

片 山博文は写真をパソコンに取り込み、イメージを数値へと変換させ、 写真の姿を借りたコンピューターグラフィックス=「偽物の写真」を作り出します。 片山の作品は、画素で構成されるペイント系ソフトではなくベクトルデータで構成されるドロー系ソフトを用いてデータ化されているところに、その最大の特徴 があると言えます。点の集合体として成り立つ画像は、拡大を続けるとその画像を構成する画素(ドット)が姿を表すため、描かれたイメージとしての形を失っ ていきますが、片山が作り出す画像は全てがベクトルデータ、すなわち数式として存在しているため、どこまで拡大されてもその姿を失わずイメージとして存在 し続けるのです。

こ の限界無きイメージの題材として片山が選ぶのは、駅の構内やオフィスビルの階段、街中の雑踏など、都会のどこにでも見受けられる風景、無機質で特徴のない 都市の一角です。これらの場所が本来持っているざわめいた雰囲気、音やにおい、人が発するエネルギーは、片山がベクトルデータの集合体として再現すると き、完璧なまでの匿名性や均質性、なめらかさといった、いわば「表層」の下に封じ込められてしまいます。しかしそうして生み出されたデータとしてのイメー ジが、非現実的でありながらどこか既視感をたたえているのは、完全な偽物であるが故に、私達が生きる都市の本質に鋭く迫っているため、とも言えるでしょ う。

片 山の作品は、ドロー系ソフトの発達が制作を可能にしたテクノロジーの産物であると同時に、気の遠くなるような手作業の集積物でもあります。このテクノロ ジーとテクニック(手わざ)という相反する技術の上に成り立った作品が、その制作過程から孕んでいる二律背反性もまた、絶えずテクノロジーを進化させなが らも自身はなにも進化することなく、自らが生み出したテクノロジーによって生かされてゆく現代人の在り方に対して、片山が持つ根本的な問題意識を象徴的に 表すものなのかもしれません。

「 ひとが信じるものに疑いを抱かせたいんです」と、片山は言います。 今目にしているものは、果たしてリアルなのかフィクションなのか? 片山の作品は私たちが認識する「現実」と「虚構」の境界を揺さぶり、新しい視覚世界を提示しようとする試みに他なりません。

本展では「Vectorscape」シリーズ待望の新作11点を展示予定です。

*Reception for the Artist: 2013年7月5日(金)18:00 - 20:00


全文提供:TARO NASU
会期:2013.7.5~2013.8.3
時間:11:00-19:00
closed on Sunday, Monday and national holidays
会場:TARO NASU
Last Updated on July 05 2013
 

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