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鈴木星亜:絵が見る世界
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 6月 10日

絵が見る世界 13_01
キャンバスに油彩・パネル
1940 x 2606mm
2013

このたびAI KOWADA GALLERYでは鈴木星亜の個展「絵が見る世界」を開催いたします。
三菱アート・ゲート・プログラムやトーキョーワンダーウォールなど、学生時代より数多くの展覧会で入選し注目を集めてきた鈴木は、多摩美術大学院在学中の2012年にVOCA賞を受賞。上野の森美術館で展示されたオリジナリティ溢れる大型作品は各方面に大きなインパクトを与え、主催者第一生命によるコレクションとなりました。鈴木は新鋭作家として最も期待されているペインターのひとりです。
数年来描き続けているテーマ、「絵が見る世界」は鈴木の中心的なテーマのひとつであり、この一見すると奇妙なタイトルは先のVOCA展でも大きな波紋を呼びました。
鈴木自身はこのタイトルを次のように解釈しています。マン・レイがカメラを機械の眼と呼んだようにもし絵画に眼があるのならば、絵画の見ている世界とは作家を通してキャンバスという網膜に映し出された世界なのではないか。なぜなら、この絵画の眼に映る世界は作家の眼に映る世界とも、作家の中にある記憶世界とも異なり、描く段階でまたひとつ何か別の変換がなされているから、と。
作家の意図に関わらず介入してくる要素を鈴木は「絵に描かされている部分」と呼びます。この不可思議な何かへの純粋な好奇心と真摯な問いこそが鈴木作品の真髄とも言えるでしょう。
油絵というコンサバティブなメディアを用いる鈴木は、一方で独創的なメソッドで作品を制作します。ひとつはスケッチをメモで、すなわち言葉でとること。ドローイングや写真など様々な形態でのスケッチを試した末、メモだと単語や文章ごとにイメージが浮かぶため風景の要素を取り出すことができ、遠近法や絵画的パースペクティヴから自由な空間の捉え方が可能となることを発見したためです。今回の個展ではあえてメモを英語で取り、そこに何か違いが生じるのか新たな「実験」を加えた作品も登場しています。
もうひとつは下絵を描かず、直接油絵の具でメモに沿って順番に描いていくこと。自分の求めるものは整った構図や美しい形ではないから、とメモに書き記した要素を潔く上から順番にキャンパス上に描いて行きます。

鈴木は描くこととはすなわち「問う」ことだと言います。何かを見て絵を描くとき、そこで何が起きているのだろうか。自分が目にした3次元の世界を2次元のキャンパスに描き起こす時、何がどのように変換されているのだろうか。そもそも、自分はどのようにものを見ているのだろうか。存在や認識に至る鈴木の問いは、若者特有の第 三者を前提とした自己表現からは一線を画し、徹底して自らの内を掘り下げて行きます。

[作家コメント]
世界と絵画の間には、何が起きているのだろうか。
絵画は私をカメラのレンズのように用いて世界を自分の網膜に焼き付ける。その時、レンズである私は何らかのかたちで光を捉え、解釈し、それを絵画に焼き付けている。
レンズの様々な種類、或いは傷や劣化などによって光の捉え方が異なるように、私の光の捉え方にもあらゆる可能性がある。この限りない自由とも、底のない恐怖ともいえる可能性に目を背けずに向き合うことが、この世界について考える大きな手がかりになるのではないだろうか。
しかし如何に私が必死に光を捉えて焼き付けようとしても、それを受け取るのは私ではなく絵画なのだ。絵画に現れるものは、私の捉えた光そのものではない。それでもそこにわずかでも手がかりがあるかもしれない。そう願いながら私は、徒労でもあるかもしれない実験を繰り返すのだ。

2013 年 鈴木星亜

[作家プロフィール]
鈴木星亜 (すずき せいあ)
1986年東京都生まれ。2010年多摩美術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業。2012年多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程絵画専攻油絵研究領域終了。主な受賞歴はVOCA賞受賞(2012年)、トーキョーワンダーウォール2011入選(2011年)、シェル美術賞展2011入選(2011年)など多数。主な個展は「天国の絵画」(KEY gallery&青樺画廊、2011年)、個展(ANOTHER FUNCTION、2011年)など。主なグループ展に「VOCA展2012」(上野の森美術館、2012年)、「トーキョーワンダーウォール2011」(東京都現代美術館、2011年)などがある。

作家とのオープニングリセプション:6月22日(土)18:00~20:00


全文提供:AI KOWADA GALLERY
会期:2013年6月22日(土)~2013年7月27日(土)
時間:12:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:AI KOWADA GALLERY
最終更新 2013年 6月 22日
 

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