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清水遼太郎 展
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 5月 13日

清水遼太郎作品 2012年

展覧会開催に向けて

用の美、という言葉もあるように、日本に於いては(装飾も含めて)道具の美しさを愛でる文化がある。 古美術の世界は相当数がその対象であると言っても過言ではないだろう。昨今のデザインブームといったものも、そうしたものの一つであるという事が出来るかもしれない。

今回初めて個展を開催する清水遼太郎の作品も(ルアーといういささか特殊な対象ではあるものの)一見「用の美」という括りの中に取り込まれているかの様であるが、同時にその括りの中にはないという、「それである/ない」とでもいうべき独特のスタンスを持っている。

彼の作品はルアーではない。歴とした彫刻作品として作られている。しかしながら、その形態は明らかにルアーのそれであり、その様式に則って制作がなされている。従って道具、彫刻、いずれの視点に立っても、着地できると 同時に着地していないというアノーマリーな立場、つまり「それである/ない」ものなのだ。

本来ルアーは非常に過酷な状態におかれる道具である。水につかり、岩にこすられ、魚に噛み付かれる。常に傷を負う事によって、その機能の存在意義がある。その一方で魚の眼を惹くべく滑らかに削られ、美しく丁寧に彩色され、微妙な動きを調整されるという、いささか二面的な道具であると言わざるを得ない。

それ自体二面的な道具をモチーフにすることと、「それである/ない」という入り組んだ二面性を持った作品の在り方の掛け合わせ。放っておけば自身の構造自体に引き裂かれてしまっても不思議は無いのだが、作品の眼を奪うクオリティの高さは、そうした不安を払拭してしまう。視覚的に高級な経験は時として言説を乗り越えてしまうのである。

その在り様を云々する前に、清水遼太郎の針先にひっかかってみる事を先ずはお薦めする。

レントゲンヴェルケ代表
池内 務


全文提供:レントゲンヴェルケ
会期:2013年5月4日(土)~2013年6月30日(日)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:レントゲンヴェルケ
最終更新 2013年 5月 04日
 

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