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若林佳代子:心証
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 6月 30日

画像提供:キドプレス copyright(c) Kayoko Wakabayashi

長野県伊那市生まれ。母方の遠縁に木版画彫師の名匠、山岸主計を持ち、また両親も趣味で絵画をたしなんでいたことから、幼い頃から身近な表現として芸術がありました。東京芸大では西洋絵画の古典的な技法による、細密なテンペラ画に没頭し、その後、大学院で本格的に日本の伝統木版を学ぶようになります。この二つを学んだことによって、若林の描く作品には、描写の美しさに加え、木版特有の木目や、摺り跡、墨のぼかしが味わい深く表現されています。 言葉で人に何かを伝えるのは難しいけれど、制作を通してなら、気負わずに「自分」を吐き出せると話す若林の作品には、彼女の豊かな感情が、温かな色調に彩られたユーモラスな形によって素直に表されています。 若林の作品にとって、タイトルもまた極めて重要な役割を持っています。そのどれもが、思わず笑みがこぼれてしまいそうなユニークな表題ばかりですが、同時に、作品に深いストーリー性を持たせています。そのことが一層作品を詩的な印象に導き、観る者の心を掴んで、さらなる想像をかき立ててくれます。 本展の展覧会タイトル「心証」とは、人の言動が心に与える印象を意味する言葉で、これまでの個展にもくりかえし使われています。若林にとって作品は言語であり、そこで表されるのは、彼女が日常の中で印象に残った何気ない出来事1つ1つをどう感じ、どう捉えたかです。 「絵を描き続けることは、生きている証(しるし)を残していくようなもの。まるでナスカの地上絵のように。足下を見ているだけでは、何の意味があるのか分からない事でも、大所高所に立つと、初めて意味が見てくる・・・作家の生涯にとっても人類全体にとっても、芸術とはそういうものなのではないだろうか」と語る言葉からは、ユーモアの裏に秘められた、作家の鋭い感性がうかがえます。 本展では木版に色鉛筆やパステルで着彩をほどこしたオリジナル作品数点を発表いたします。

作家コメント
当たり前の日常が滑稽に思えたり、ささいな出来事が気になって仕方のない時、私は其れを形や色に置き換え保存する。
カメラでは撮る事のできない心の箱を、パコっと開けて記録する感じだ。
そこには交錯する感情が入り交じって、時に謎かけのような、洒落のようにもなる。
どんな形に現れたとしても言葉を持って存在する事ができればと思っている。-若林 佳代子

若林 佳代子 / Kayoko Wakabayashi
1999年 東京芸術大学美術学部油画科卒業
2001年 同大学大学院版画研究科修了
2002年 同大学大学院版画研究科に研究生として在籍

※全文提供: キドプレス

最終更新 2009年 8月 01日
 

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