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大野智史:予言者
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 6月 16日

copyright(c) Satoshi OHNO

大野智史の作品には、自然と人工との融合、閉塞した空気感、一方で自然界とどこかでつながっている自分が新たに捉え直す空間の感覚などのテーマが垣間見られます。2004年に参加した鹿児島県、甑島アートプロジェクトでは亜熱帯の島で実際に生活し、その後も北海道の原生林やカリブ海のケイマン諸島、ハワイなどを展示で訪れた大野は、活動拠点を富士吉田へと移し、自分の思念の中の原生林を空間に再現するかのように、絵画作品と立体、写真、床に広がる砂絵などを組み合わせたインスタレーションを続けて来ました。そこには自分をとりまく深い自然への、呪術的なまでの回帰の感覚が、色濃く反映されています。

昨年、横浜のZAIMで行われた「THE ECHO」展では、「自画像という極めて個人的なテーマが女性の子宮の世界観を取り込み、原生林のひとつの大きな母体にまでつながる」(作家談)展示を試みました。繰り返し登場する自画像はもはや男女の性別を越えて両性具有であり、所々に見られる球体の発光源(プリズム)が、森の中に迷い込んだ観客を導くかのように輝き、そこにはまさに大きな母体の胎内に広がる、子宮としての森が現れたかのようでした。

【この展覧会について】
「原生林という生命の原初的な場所をひとつの大きな母体とし、森全体の総体を子宮のようなものとして考える。巨大な倒木は男性の象徴として横たわっている。その倒木は『予言者』に導かれながら森の中をオレンジの光に向かって進んでいく。オレンジの光とは、肉体の光であり、母性の光である。」(作家談) 本展では、ギャラリーの2フロアを使って、高さ5m近くの巨大なペインティングなど、大規模な展示を予定しています。どうぞこの機会にご高覧下さい。

【作家プロフィール】
大野智史は1980年岐阜県生まれ。2004年東京造形大学卒業、06年同大学大学院中退。現在山梨県を拠点に、制作活動を行っています。主な個展に「acid garden」(小山登美夫ギャラリー、東京、06年)、「Prism Violet」(ホノルル現代美術館、ハワイ、07年)、「PHYSICAL TREE」(magical ART ROOM、東京、08年)など。主なグループ展に、「Koshikijima Art Project」(甑島、鹿児島、04年)、「PRAHA project」(札幌、05年)、「ritual」(トーキョーワンダーサイト渋谷、東京、07年) 「THE ECHO」(ZAIM 別館、横浜、神奈川、08年)などがあります。作品は原美術館(東京)に収蔵されている他、恵比寿の喫茶<magic>(NADiff A/P/A/R/T 4F)で作品をご覧頂けます。また今年、7月26日から9月3日まで開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」では、「福武ハウス 2009」(旧名ヶ山小学校)に出展致します。体育館を空間いっぱいに使って繰り広げられるインスタレーションを、どうぞお見逃しのないよう足をお運びください。

※全文提供: 小山登美夫ギャラリー

最終更新 2009年 6月 27日
 

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