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鈴木諒一:観光
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 1月 17日

© Ryoichi Suzuki

この度 EMON PHOTO GALLERY では、鈴木諒一による初個展『観光』を開催致します。 既存の物語と現在の自己との間を、時間と記憶と場所を絡めながら書物を手掛かりにアプローチしている鈴木諒一は、本展示においても、書物における最遠の場所へのまなざしをテーマに、作品を立ち現せております。作家が名付けた『観光』という所作により顕在化された情景を、どうぞご高覧下さい。 また、今回インテリアショップ「TRANSHIP」の家具をお借りして、物語を想像させる空間演出による、芸術と家具の融合も見所となっております。
EMON PHOTO GALLERY

[作家コメント]
書物には、人の手によってそれがかたちづくられている故のおおくの必然が隠されている。特に図鑑のような形態には、これまで人間が発見し、活用してきたメディアとしての書物のアーカイバルな特性や「現実」への実践的な介入欲求が顕著に見え隠れしている。真に人間的な独断、歴史の独断によって決定された言葉の順列によってそれは並び、場所や動物もその名前の類似や、気候や国や成り立ちといった類似によって、再配置と再認識を決定づけられる。
しかし、あくまでもそれは、書物にたいして正当な角度から接近したさいに用意されるひとつの世界に他ならない。その接近は、同時に存在する「別」の書物を隠し、別の繋がりのあり方の発見と証明を妨げることはあっても、それを失わせることは出来ないのだ。
誰が言ったか、世界で一番遠くにあるページはそのページ自身の裏側であるという。そう考えることもまたきっと、不可能ではないはずだ。
「近かったすべてのものは、遠ざかる。」
夕暮れを思い書き記したゲーテの詩のごとく、そこにはある種の「距離」の識別の欠如と発生がある。私は幻想について語ろうとしている訳ではない。人間の積み重ねてきたひとつの認識の仕組みに立脚しながら、そこから逃れ出ててしまった偶然の暗号とでもいうべき世界の現出がたったひとつのページ、つまりははからずも製本された1枚の紙には宿っているにちがいない。
私はその1枚の紙を見つけ出す所作を『観光』と名付けた。これはある意味では、ルソーのなし得た風景の発見とも繋がりをもちうる、言ってみれば書物のなかにアルプスの大気を見出す行為である。太陽の光によって表裏をひとつにしたイメージたちは、一体となった内側に潜在したものを再表象することによってそれを証明するだろう。

鈴木諒一

[作家プロフィール]
鈴木諒一 

1988年 静岡県生まれ
2011年 多摩美術大学美術学部芸術学科卒業
2013年 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻在学

受賞
第5回 東野芳明記念 ・ 芸術学科優秀卒業論文賞
第1回 EMON PORTFOLIO REVIEW グランプリ

個展
2013年 『観光』 EMON PHOTO GALLERY(東京)
グループ展
2009年 『Pre-sense』 Mott Gallery(東京)
『TAMA VIVANTⅡ 2009』 多摩美術大学(東京) ・ みなとみらい(横浜)
2011年 『Artexpo New York 2011』 Pier94(New York)
『もうひとつのトビラ2011 尾久発01』 北井画廊(東京)
『UZNAOMOM企画展』 UZNAOMOM(東京)
『Atlas2011』 東京藝術大学取手校地(茨城)
2012年 『EMON Portfolio Review 第1回グランプリ受賞展「郵便機」』 EMON PHOTO GALLERY(東京)
『Guimarães noc noc 2』 ギマランイス(ポルトガル)

オープニングレセプションパーティー
2013年2月1日(金) 18:00~20:00 入場無料

鈴木諒一

全文提供:EMON PHOTO GALLERY
会期:2013年2月1日(金)~2013年2月26日(火)
時間:11:00~19:00 土曜11:00~18:00
休日:日・祝
会場:EMON PHOTO GALLERY
最終更新 2013年 2月 01日
 

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