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早川克己:Double:Vision
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 6月 11日

≪発光体 3≫2009年 Acrylic on canvas, 85.5 x107cm copy right(c) Katsumi HAYAKAWA

≪Amplitude≫2009年 Acrylic on canvas, 120 x 120cm copy right(c) Katsumi HAYAKAWA

 

今回の作品群についてのキーワードを列記してみます。
奥行き、速度、明滅、流れ、浮遊、隙間、斜め、穴、裏、巨視的、微視的、重ね合わせ、反射、ぬめり、世界、外側、などが上げられると思います。
これらの言葉から想起される絵画空間の多重性とホロニックな構造という発想を機軸に、絵画の更なる可能性の探求と新たなビジュアル言語の創出を試みたいと考えています。
2009 年 早川克己

作品は一見、空中から俯瞰した都市という感じや、宇宙空間を想起させる抽象画のようですが、絵の具を何層にも重ねて色層を作り、表面を電動ドリルで削り取って色を掘り出します。光沢のある滑らかな平面と、削られた無光沢の凹凸の対比がテクスチャーを形成して、絵画の物質性を引き出し、従って色層の選択と削り取る程度や方法によって、作品は全く違ったものになります。

今展ではオープニング展での展示に見られた2 種類の作品構成となり、そうした意味で個展タイトルが「Double:Vision」(ダブルビジョン)と名付けられています。この二つの違いは極めて単純で、画面に描かれる対象のエッジがシャープかソフトかということだけです。しかしそこに立ち現れる絵画は全く異なった表情を持ちミラクルです。つまり今回の展示で言えば、四角はシャープ丸はソフトということになり、たったこれだけのことで画面内の地と図の(対象と背景)関係が大きく変わってきて、輪郭線の問題を提起しています。また同時に、物体としての絵画か、イリュージョンとしての絵画かという意味での、絵画を巡る二重性という問題を意識してのタイトルとなっています。

作品内容に関しては、今回画面の基本構造に透視図法を用い、ダヴィンチの「最後の晩餐」が意識されていますが、そこに作者は宗教性や崇高性の現れを見るからだと言います。制作者の意図と見る人との意識の乖離は良くあることで、アートの面白さはむしろそうしたところにもあります。作者の意図を理解してから作品を見るか、理解してから作品コンセプトを考えるか、あるいはストレートに感じたものをそのまま直接受け止めるか、鑑賞者に委ねられています。 今年もニューヨークでの個展やイスタンブールでのグループ展参加など、海外での展示も予定されその活躍が期待されています。

1970 栃木県生まれ
1992 日本大学芸術学部美術学科版画専攻卒業
1998 School of Visual Arts, New York 修士号取得
個展
1999 Daniel Silverstein Gallery (ニューヨーク)
2000 Daniel Silverstain Gallery(ニューヨーク), McClain Gallery(ヒューストン)
2004 McClain Gallery(ヒューストン)
2007 GarsonBaker Fine Art (ニューヨーク)
2008 McClain Gallery (ヒューストン), GarsonBaker Fine Art (ニューヨーク)
2009 GALLERY MoMo Ryogoku(東京), GarsonBaker Fine Art (ニューヨーク)
スカラシップ & アワード
1997 INTERENATIONAL ENCAUSTIC WORKS '97 最優秀賞(New York)
2005 第20回 ホルベインスカラシップ
2006 野村国際部文化財団助成

※全文提供: ギャラリーモモ

最終更新 2009年 7月 04日
 

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