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There of the mark
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Published: December 21 2012

伊佐治雄悟

湖畔で出会った釣り人同士が釣りの話をするように、見知らぬ人と彫刻の話ができたらどんなに楽しいだろう。日常の中で、もっと当たり前に彫刻の話ができたらどんなに嬉しいだろう。たまに、そんな他愛もないことを夢想する。

歴史を振り返れば、彫刻(のみならず美術全般)はその要素を分析し、取り出した一部の要素を展開させることによってジャンルの範囲を拡大してきた。定義の曖昧さもあり、英語のsculptureという語はほとんど、彫刻的、という意味合いにまで拡大した。彫刻とは今や彫刻的な概念を含むあらゆるモノ、あらゆるコトについて言える(はずである)。 にもかかわらず私達は目に入るモノに対し、ほとんど無意識のうちに彫刻と呼ぶべきか否かの線引きをする。作品に対し、彫刻という言葉を使うか否か、の選択をする。彫刻的な要素は多分に含んでいるものの、彫刻と呼んでしまうことはためらわれる、と感じることもある。私達は一体何をもって彫刻だと感じるのだろうか。彫刻の定義は曖昧で、個々人によってもだいぶ違う。また、ためらいの多くは固定観念に由来する。それは料簡の狭い思い込みではあるが、馬鹿にはできない。狭かろうが広かろうが皆どこかに、曖昧な“彫刻”なる線引きを持っているのだから。 要素を分析することは、漠然とした全体を考えるうえで欠かすことができない。しかし彫刻的要素が含まれているだけでは、そのモノを必ずしも“彫刻”と呼ぶことはできない。ましてや彫刻という線引き自体が人それぞれに違う。本展は「彫刻家」を名乗る四名の展示である。この中でも彫刻の線引きには各々違いがある。しかしながらそれぞれが歴史から彫刻的要素を分析し、考察や実験を繰り返しながら、それでもなお根拠の不確かな(自らの)彫刻なるものを立ち上げていく、という点に違いはない。その循環によってのみ観念は更新され、“彫刻”の輪郭は広がることができる。要素の細分化と解釈の拡大の先に、もう一度、雑多な総体としてそれらを立ち上げること。“的”という明らかなものの先に、わからなさを見つめること。彫刻家の仕事はそこにある。

てき【的】
〖名〗①まと。めあて。「射━」「目━」
②あきらかなこと。間違いのないこと。「━然」「━確」
③(中国語の「的」(助詞の「の」にあたる)をそのまま音読した語)名刺に添えて、その性質を帯びる、その状態をなす意を表す。「私━」「一般━」
字源:会意形声。「白」+音符「勺」(シャク:一部を取り出す様子)、一部を取り出して明白にするの意。
(広辞苑第四版、及びウィクショナリーより抜粋)

[作家プロフィール]
○伊佐治 雄悟(Yugo Isaji)
1985 岐阜県出身
2008 多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業
2011 台北市と横浜市の芸術家交流事業に選出。台北で滞在制作を行う。

個展
2011 〈後日常〉stock20(台中)
〈イサジパターン〉Art Center Ongoing(東京)
〈Isaji solo exhibition〉一年画廊(台北)

グループ展
2010 〈シンプルプラン〉Art Center Ongoing(東京)
2011 〈Art Supply I〉台北芸術村(台北)
2012 〈黄金町バザール2012〉(神奈川)
http://www.isajiyugo.com/


○今井 大介(Daisuke Imai)
1979 秋田県出身
2007 多摩美術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了

個展
2008 〈蛇口 あるいは 平行宇宙〉秋山画廊(東京)
2009 〈群盲が巨象を撫でる〉秋山画廊(東京)
2010 〈城〉秋山画廊(東京)

グループ展
2009 〈rule of〉ZAIM(神奈川)
2012 〈short〉秋山画廊(東京)


○大野 綾子(Ayako Ohno)

1983 埼玉県出身
2006 女子美術大学芸術学部立体アート学科卒業
2008 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了

個展
2007 〈大野綾子展〉Galleria grafica bis(東京)
2010 〈on〉秋山画廊(東京)
2012 〈角で端を見る 企画:竹下都+表参道画廊〉表参道画廊(東京)

グループ展
2011 〈Showcaseshow〉 MEGUMI OGITA GALLERY(東京)
〈Art Session TSUKUBA2011〉平沢官衙遺跡(茨城)
〈SPIRALE 2nd ・11人の仕事・〉YAMAWAKI GALLERY(東京)
2012 〈第7回大黒屋現代アート公募展〉板室温泉大黒屋(栃木)
〈P.I.C.K.U.P〉秋山画廊(東京)
〈SPIRALE+Exhibition〉松本市美術館ギャラリー(長野)
〈SLASH/08 -醒めない蜜の味をちょうだい- 企画:結城加代子〉waitingroom(東京)
http://ohnoayako.com/


○真部 知胤 (Tomotsugu Manabe)

1981 香川県出身
2009 多摩美術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了

主な展示
2009 〈ANOTHER FUNCTION〉 筆屋コーポレーション(東京)
2010 〈あらゆる場所から遠く離れて〉作家アトリエ(神奈川)
2012 〈SLASH/07 できるだけ遠くをみろ〉nap gallery (東京)
2012 〈アートプログラム青梅〉青梅市立美術館 (東京)

●オープニングパーティー 1月12日(土)18:00~

●トークイベント 2月2日(土)16:00~17:00
歌人の永井祐(ながい・ゆう)さん(1981年東京生まれ 2012年、歌集「日本の中でたのしく暮らす」を発表)をお迎えして、日常の感覚や現代性、ジャンルと形式、などをキーワードに話をしていきます。


全文提供:AKIBATAMABI 21
会期:2013年1月12日(土)~2013年2月11日(月)
時間:12:00~19:00(金・土は20:00 まで)
休日:火
会場:AKIBATAMABI 21
Last Updated on January 12 2013
 

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