| EN |

詫摩昭人:逃走の線
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 12月 17日

(C)Akihito TAKUMA,《Lines of Flight, op359》, 2012, "100cm×72.7cm", Oil painting

詫摩昭人(1966年熊本県生まれ)は、93年滋賀大学大学院教育学研究科美術教育修了後、約1年間マドリッドのシルクロ・デ・ベラス・アルテスで学ぶ。哲学者ジル・ドゥルーズの思想に大きな感銘を受け、92年の初個展「生成変化」にはじまり、コンセプチュアルな作品「行動表絵画」を発表する。2004年より、横幅2m以上の刷毛で一気に仕上げる油彩の作品「逃走の線」に展開する。教育者の一面として、現在和光大学准教授を務め、学生への絵画指導に熱弁を振う。

本展タイトルとなる《逃走の線》とは、ドゥルーズの言葉より、「秩序づけられた構造や理想から逸脱する運動の軌跡」と示している。詫摩曰く、「常に我々は二項対立に悩まされています。そこを飛び越えることが重要です。様々なものをシャッフルする必要があります。画面全体を包み込み、巨大な刷毛を一気に走らせた一瞬の出会いが最高だった時の感動は、今のところ他に代わるものはありません。修正が不可能な一瞬の輝きを感じる作品は、日本古来からあるもので、李禹煥やジャクソン・ポロック、ゲルハルト・リヒター、サイ・トゥオンブリーの仕事も意識しつつ、日常から発言するヨーゼフ・ボイスも視野に入れ、二項対立をすり抜けた先に、何が残るのかを見極めることが、私の関心ごとなのです。」また、上記のアーティストたちの仕事に加え、ピーター・スーラージュの抽象絵画の仕事やデイヴィッド・リードのブラシストロークス(1974-75)やマルチパネルペインティングス(1977-79)とともに、その作品にある気配や思考性から汲み取れる身体性も見逃せない点と言えるだろう。詫摩は、1年間のヨーロッパ滞在の経験をもとに、日本の湿潤で絵の具もなかなか乾かない特性を生かし、遠景までハッキリと見えない点など、日本と西洋との土壌の違いに着目する。イメージも秩序を感じさせるものを選択し、それを2m以上の刷毛で一気にかき消すことで、見えるか見えないかの、相反するもののギリギリのバランスと表現を試みている。

今回の個展では、本年9月秋山画廊(東京)の個展の前段階に制作した自身最大サイズの刷毛を使用した横幅3m20cmを初公開し、その作品を中心に構成する。詫摩にとって4年ぶりとなる京都の個展を、是非ご覧頂きたい。

天野雅景 (写真家、雅景錐クリエイティブディレクター)

[作家プロフィール]
詫摩昭人

1966 熊本県生まれ
1993 滋賀大学大学院教育学研究科美術教育修了
1993~94 渡欧、シルクロ・デ・ベラスアルテス在籍(マドリッド、スペイン)
2005 第20回ホルベイン・スカラシップ奨学生
現在、和光大学表現学部芸術学科准教授

主な個展
2012 「逃走の線」秋山画廊(東京)
2010 「逃走の線-サハラへ」紀伊國屋画廊(東京)
2009 「逃走の線」ギャルリー東京ユマニテ(東京)
2008 「逃走の線」立体ギャラリー射手座(京都)
2007 「逃走の線」信濃橋画廊(大阪)
2006 「逃走の線」信濃橋画廊(大阪)
2005 「逃走の線」信濃橋画廊5、(大阪)
2004 「逃走の線」信濃橋画廊(大阪)
2002 「90年代の私-日常に価値を与えるために」信濃橋画廊5(大阪)
2001 「私の知らない、私-≪記憶≫」立体ギャラリー射手座(京都)
2000 「出て行くために」信濃橋画廊(大阪)
「出て行くために」立体ギャラリー射手座(京都)
1999 「国境から逃れて」信濃橋画廊5(大阪)
1998 「行動表絵画」信濃橋画廊5(大阪)
「未来のための表現機械」立体ギャラリー射手座(京都)
1997 「行動表絵画-「あ・る」について-」信濃橋画廊(大阪)
1996 「行動表絵画-それは、つながれる-」信濃橋画廊(大阪)
「行動表絵画-二項対立をすりぬけるために」立体ギャラリー射手座(京都)
1995 「行動表絵画・2-あなたの行動表を提供してください-」信濃橋画廊エプロン(大阪)
1994 「行動表絵画-’84年8月~、日常アート3621日-」ギャラリー射手座(京都)
1992 「生成変化」ギャラリー射手座(京都)

主なグループ展、その他
2012 「黒ノ美學」雅景錐(京都)
「バッタもんのバッタもん」アーティスロング(京都)
「錐十字」雅景錐(京都)
2011 Mark Humphrey Gallery(Southampton, New York)
「自家ハツデンでGO!」可喜庵(東京)
2010 「ASIA and RICE Exhibition」sori arts center of Jeolla Buk-do,Changheum(全州、韓国)
「自宅を用いての展覧会」相模原市の自宅(神奈川)
「一日だけの展覧会、ハガキ」信濃橋画廊(大阪)
2009 「表層の冒険者たち」exhibit Live & Moris Gallery(東京)
「コレクション展―風景画に親しむ」兵庫県立美術館(兵庫)
2008 「満月アートフェスティバル」滋賀県立近代美術館ギャラリー(滋賀)
2007 「百花繚乱」兵庫県立美術館ギャラリー(兵庫、08年も)
2006 「第4回池田満寿夫記念芸術賞」洋協アートホール(東京)/大阪府立現代美術センター(大阪)
2005 「震災復興10周年記念国際公募展兵庫国際絵画コンペティション」兵庫県立美術館(兵庫)
「芸術家の線」石田大成社ホール(京都)
2005~2001 「種をまくプロジェクト」参加(京都・滋賀)
2004 「日常性と非日常性」比良美術館(滋賀)
1999 「びっくりアートフェスティバル」滋賀大学付属小学校(滋賀)
1998 「個のしごと」信濃橋画廊(大阪、’01年も)
1997 「自宅を用いての展覧会」滋賀県草津市の自宅(滋賀)
1997 「IACK」ギャラリーマロニエ(京都、~毎年)
1996 「九州美術の現況展」都城市立美術館(宮崎)
1996 「IACK」ギャラリー射手座(京都)
1994 「九州美術の現況展」鹿児島市立美術館(鹿児島)
1992 「国際インパクトアートフェスティバル」京都市美術館(京都)
1991 「京都アンデパンダン」京都市美術館(京都)
1990 「二人展」ギャラリー射手座(京都)

受賞
2011 Saatchi Online SHOWDOWN’s Top Finalists
2005 震災復興10周年記念国際公募展兵庫国際絵画コンペティション 優秀賞(二席)受賞

コレクション
兵庫県立美術館
色彩美術館

1月12日(土)レセプション 午後5時より

全文提供:雅景錐


会期:2012年12月7日(金)~2013年1月19日(土)
時間:12:00 - 19:00 通常 金・土 12:00 - 19:00(ファースト・フライデー:毎月第一金曜日は21:00まで。他の日時についてはアポイント制、展覧会により営業日の変更あり)

会場:雅景錐

最終更新 2012年 12月 07日
 

関連情報


| EN |