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変成態-リアルな現代の物質性:Vol.3 「のようなもの」の生成
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 5月 31日

泉 孝昭≪untitled≫2008年 紙袋、塗料、ワイヤー copyright(c) Takaaki IZUMI

上村卓大≪BB弾について≫2008年 ポリエステル樹脂、ファイバーグラス、ラッカー塗料、ウレタン塗装 h88xd88xw88cm copyright(c) Takahiro KAMIMURA

「のようなもの」の生成
ここには何気無い日常の物々が散見されるであろう。なんの特別な主張も無い、しかしなにかが異なるズレの意識を感じる物たちだ。今回の展観で最も若い20~30代前半の彼らの造りものはひそやかな戦略に満ちている。
カラフルなポリ容器がギャラリーに置かれている。そのオイルか何かが入っているかのようなかたちも何かが違っている。作家が造ったどこにも無い樹脂作品なのだが、上村卓大の予定している他の作品もダンボールやサーフボードのようなごくありふれたものが、この倉庫のような場に並ぶだろう。また、天井から下がったアンテナの複合体、モターで回転するタイヤ、あるいは床に置かれ重ねられた輸送用のパレット等々の新作を予定している泉孝昭。そこには近代美術の記憶が微かに感じられなくもないだろう。上村におけるポップアートから、アプロプリエーションものまで。
または泉における近代のピカソ・タトリン以降の造形、そしてデュシャンのレディメイド・・・。
もしくはカール・アンドレ?しかしデュシャンの曾孫のようなかれらには、シュミュレーションの果てにもはやなさけないくらいに文学性も物性へのこだわりもない。むしろ日常品を使いつつも徹底的に自己の痕跡を無くして、日常の際、フレーム(枠組み)をこそ造っているかのようだ。
物の本質的な特性に求心的に向かうのではなく、横滑りに日常に韜晦しつつもズレを起こすこと。それはものの存在が確からしい実体性を前提とした作品ではないだろう。一見するなら、声高に主張することのない作品は、美術の言語を使いつつ、美術のラインギリギリの構えの中で「のようなもの」を造りつづけることかも知れない。
-「変成態-リアルな現代の物質性」 Vol.2 揺れ動く物性:ゲストキュレーター/天野一夫 (豊田市美術館チーフキュレーター)

泉は1975年福岡県生まれ。1998年愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業。主な個展に2008年( HOET BEKAERT GALLERY、ゲント)、「VOLTA NY」(ニューヨーク)、2006年(TARO NASU、東京)、2005年muzz program space、京都 、2004 年「布と袋」(+Gallery、布袋町、愛知)など。主なグループ展に2008年「ECHO」(ZAIM、横浜)、「daily work」(dot、北名古屋)、2007年「ポートレート・セッション」(広島市現代美術館、広島)、2006年「VOCA展2006」(上野の森美術館、東京)、「レディメイド:マップ」(トーキョーワンダーサイト渋谷、東京/+Gallery、布袋町)、2004年、「AKIMAHEN!」(Collection Lambert en Avignon、アヴィニョン)、「EEJANAIKA YES FUTURE!」(Maison Folie de Wazemmes、リール)、2000年「フィリップモリスアートアワード2000 最終審査展」(恵比寿ガーデンプレイス、東京)など。

上村は1980年高知県生まれ。2005年武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程単位取得退学。主な個展に2008年「closed room」(武蔵野美術大学FAL、東京)、2007年「夜景と食卓」(村松画廊、東京)、2006年「いいなづけ」(同)、2005年「TOWN WORK」(同)など。グループ展に2008年「plastic trees/ceramic girl」(CAMP/Otto Mainzheim Gallery、東京)など。2006年「第1回美術作品コンクール-Concours des Tableaux-」(高知市文化プラザ)優秀賞受賞。

※全文提供: gallery αM

最終更新 2009年 7月 25日
 

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