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変成態-リアルな現代の物質性:Vol.2 揺れ動く物性
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 5月 30日

冨井大裕≪ゴールドフィンガー≫2007年 画鋲:181.5×181.5×0.1cm:柳場 大|Copyright © Motohiro TOMII

中西信洋≪Stripe Drawing-Tokushima Sky≫2008年 pencil on paper 500x2170cm, photo:Hidefumi Morimiya 展示風景:「IWANO MASAHITO 現代アートによる徳島再見」徳島県立近代美術館|Copyright © Nobuhiro NAKANISHI

冨井大裕と中西信洋とはほぼ同世代でともに精力的に発表を続けてきているが、関東と関西をそれぞれ主たるベースとしてきていて、これまで一度も会いまみえたことは無い。また一見するならその作品の姿も大きく異なってもいるだろう。

冨井の作品の多くは既製品を駆使していて、それを加えず、引かず、物のツボを刺すように密かな作業で介在し、全く異なる特殊な物体にしている。壁に無数に突き刺した画鋲による擬似的な平面や、エアーキャップの切片の重ねによる彫刻のようなものも、解体可能で、更新可能な姿をわれわれに見せている。

中西の作品も、われわれの観賞を遥動させる。箱型の内側に粘土で作った造形の余りの空間を取り出す、ネガポジ反転した制作法による立体。すき間を持って、透視可能な無数の横線によるウォールドローイングは、図と地があやふやで何を見ているのかが確定しない。さらに時間層が折り込まれたレイヤーはさらに複雑な空間となっていよう。

二人の造形における知覚の経験は他の在り方にも入れ替わる、いわば不断の落ち着きの無さの渦中に在るだろう。その作品はさしあたっての組成の姿をここに見せてわれわれは不可解な経験をすることになるだろう。

-「変成態-リアルな現代の物質性」 Vol.2 揺れ動く物性:ゲストキュレーター/天野一夫 (豊田市美術館チーフキュレーター)

冨井は1973年新潟県生まれ。1999年武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。近年の主な個展に2009年「copy boy」(ギャラリー現、東京)、2008 年「企画展=収蔵展」(アーカス・スタジオ、茨城)、 「身の回りのものによる色とかたち」(遊戯室[中崎透+遠藤水城]、茨城)、2007年 「世界のつくりかた」(art & river bank、東京) 、「みるための時間」(武蔵野美術大学美術資料図書館・民俗資料室ギャラリー、東京)など多数。 主なグループ展に2008年アートプログラム青梅「空気遠近法・青梅-U39」(青梅織物工業協同組合施設、東京)、2007年「ニュー・ヴィジョン・サイタマ III 7つの眼×7つの作法」(埼玉県立近代美術館、埼玉)、2005年「芸術の山/第0合/発刊準備公開キャンプ/立体編その1」(NADiff、東京)、「字界へ-隘路のかたち-」(長久手町文化の家、愛知)など、コンスタントに発表を続ける。

中西は1976年福岡県生まれ。1999年東京造形大学彫刻科卒業。2002年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。主な個展に2007年「Halation」(ノマルプロジェクトスペース、大阪)、2006年「Saturation」(大阪府立現代美術センター、大阪)、2005年「個展」(INAXギャラリー、東京)、2004 年「supplement」(ギャラリーそわか、京都)、2003年「 空洞と空白」(ノマルエディション、大阪)など。主なグループ展に2008年「SENJIRU-INFUSION」(Gallery Kasya Hildebrand、チューリッヒ・スイス)、2007年「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展(森美術館、東京)、「Exhibition as media」(神戸アートビレッジセンター、兵庫)、「徳島再見」(徳島近代美術館、徳島)、2005年「かわりゆく世界で transformation / metamorphosis」(国際芸術センター青森、青森)、2003年「trans-」(京都芸術センター、京都)など

※全文提供: gallery αM

最終更新 2009年 6月 13日
 

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