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エマニュエル・ギヨー+ 鷹野隆大 : 黒い白
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 9月 06日

エマニュエル・ギヨー《Untitled》© Emmanuel Guillaud

鷹野隆大《12.03.15.bw》©Ryudai Takano, Courtesy of Yumiko Chiba Associates, Zeit-Foto Salon

[作家コメント]
ギヨー氏と初めて会ったのは、確か3年ほど前、彼の個展会場だった。ギヨー氏はそれ以前から僕のことをフランスのメディアに紹介してくれていたのだが、僕が彼について知っていることと言えば、出身がフランスであること、日本に数年間住んでいること、本職が写真家であることのみで、多くは謎だった。
会場では夜の公園や非常階段の写真がスライドショーで上映されていた。夜の写真はこれまでたくさん見てきたが、それとは違って濃密な性の匂いを感じた。このように闇を見、写せる人は滅多にいない。穏やかで明るそうな彼の見かけとは違い、謎が一層深まったような衝撃を受けたのを今も覚えている。
今回の展示は、昨年、彼が帰国する直前に持ちかけたものだった。感傷的になった部分もあったかもしれない。しかし何かしら面白いことができそうな予感はあった。例えば『黒い白』というタイトル。これは日本語を母語としないギヨー氏が「黒と白」と書くべきところを誤ったところから生まれたタイトルである。
夜の闇を多く扱うギヨー氏の作品はカラーであるにもかかわらず、ほとんど色味がなく、画面の大半を黒が占めている。一方、モノクロフィルムで撮った僕の作品は太陽光をテーマにしており、画面は白が基調となっている。「夜と昼」「人工光と太陽光」「闇と影」といった違いが二人の作品にはある一方、写っている対象に強い意味を持たせていないところが共通している。遠目に見れば、黒い写真と白い写真に見えるだろう。
というような話をしていたときに、ギヨー氏がメモ書きをしたのだが、それが「黒い白」だった。期せずして彼は二人の作品が混じり合った状態を言葉にしたのだ。この偶然に心を奪われた僕は、見る人の頭の中で二人の作品が混じり合ってグレーとなる展示構成をイメージした。
フランスと日本という距離も環境もかけ離れた二人の作品が混じり合ってグレーになるとしたら、それは「あらゆる色を混ぜればグレーになる」という自然の法則を別の形でなぞったことになる。僕にはこれが小さな奇蹟に思えてならない。グレーは数ある色のひとつではなく、特別な重みを持っているのかもしれない。この展示でそんなことを表せたなら幸いである。

鷹野隆大

[作家プロフィール]
■エマニュエル・ギヨー(Emmanuel Guillaud)
1970年フランス・パリ生まれ。アーティストとしてパリと東京を拠点に活動する。主な制作として、写真によって構成された複数のスライドシ
ョーを同時に映し出すインスタレーション作品があげられる。2007 年より、現在も進行中のシリーズ《until the sun rises》を手掛ける。単一のスクリーンによるプロジェクトから始まったこのシリーズは、“Les Rencontres d’Arles - Voies Off International Selection, 2007”(フランス、2007)、Museum of Arts, Palm Springs (U.S.A.、 2009)、G/P gallery (東京、2009)で発表。 また、このシリーズは様々な場
所で複数のスクリーンに映し出すプロジェクトに発展し、Noorderlicht Gallery,(オランダ、2009)、School Gallery(パリ、2010)、Singapore Art Museum(シンガポール、2011)で展示される。主な展覧会として、“Photo Espana”(スペイン、2009)、東京都現代美術館“トーキョーワンダーウォール”(東京、2005,2010)、Photographic Art Center(USA、2009/2010)、東京日仏学院(東京、2010)。
2012 年には《Until the sun rises》の制作過程をまとめた「021 Emmaunuel Guillaud+Kiyoshi Takami Notes on unfinished projects」(アートビートパブリッシャーズ/ヒューリスティック)が刊行された。

■鷹野隆大(たかの りゅうだい)
1963 年福井県生まれ。写真家。1994 年から作品を発表しはじめる。2006 年にはセクシュアリティをテーマにした写真集『IN MY ROOM』(蒼穹舎)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞。身体や性といったテーマの他、近年は都市にも興味を向けている。2010年、鈴木理策、松江泰治、倉石信乃、清水穣と「写真分離派」を立ち上げる。
主な個展に、「立ち上がれキクオ」ツァイト・フォト・サロン(東京、2012)、「モノクロ写真」Yumiko Chiba Associates viewing room
Shinjuku (東京、2012)、「金魚ブルブル」ツァイト・フォト・サロン(東京、2010)、「おれと」ナディッフ アパート(東京、2009)、「公開制作
46 記録と記憶とあと何か」府中市美術館(東京、2009)など多数。また、「液晶絵画 STILL/MOTION」東京都写真美術館(東京、2008)、「Beyond The Border」Tangram Art Center(上海,中国、2010)、「木村伊兵衛賞 35 周年記念展」川崎市民ミュージアム(神奈川、2010)、「PARIS PHOTO 2008」カルーセル・ドゥ・ルーヴル(パリ,フランス、2008) 、「高松次郎|鷹野隆大”写真の写真”と写真」太宰府天満宮 宝物殿(福岡、2009)などグループ展にも数多く参加、国内外で作品を発表している。

■オープニングレセプション
2012年10月12日(金) 18:00-20:00
※エマニュエル・ギヨーが来日いたします。
※当日、開催時刻に会場までお越しください。


全文提供:ユミコ チバ アソシエイツ VIEWING ROOM-shinjuku
会期:2012年10月12日(金)~2012年11月10日(土)
時間:12:00-19:00
休日:日・月・祝
会場:ユミコ チバ アソシエイツ VIEWING ROOM-shinjuku
最終更新 2012年 10月 12日
 

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