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関口正浩:仮面
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 7月 11日

画像提供:児玉画廊 | 東京

児玉画廊|東京では、7月7日(土)より8月11日(土)まで関口正浩個展 「仮面」を下記の通り開催する運びとなりました。
関口は、シリコン樹脂製の大きな平板の上に油絵具を塗り伸ばし、 それを乾燥させて作った色の膜をあたかもコラージュするかのよう にキャンバスに貼付ける、という技法で平面作品を制作しています。 経験的に生み出してきた独自の体系に基づくカラーリング、襞や裂 け目など布地のように大きな起伏をなす画面、具象性の一切ないあ くまで単純明快な構成など、その作品を特徴付ける要因は視覚的に 非常に理解しやすいものであり、そして端的に関口正浩という作家 の「平面」というカテゴリーに対するある姿勢を表しています。
関口にとって、自らの作品が絵筆を用いたいわゆる絵画的なもので ないことは既に自覚的であり、その視座に立ってなお、あくまで 「オイル・オン・キャンバス」であり続けるには理由があります。 かねてから関口は折に触れて「無重力下での絵画」という仮定に基 づいた持論から、自らの作品の立ち位置を説明してきました。例え ば、仮に宇宙で絵画を制作するならば、壁にかける為の目的 (重力 に抗い、イメージを立ち上がらせる)においてはキャンバスは無用の ものとなり、また、宇宙の無方向性の中においてはそもそも「平面」 という2方向性に囚われること自体になんら意味を見出せなくなる のではないか、と関口は想定しています。つまり、大げさに言えば 関口にとっては、色(絵具)そのものが平面性から解放されていくの が然るべき絵画である、ということです。この考えによれば、関口 が今行っている色を膜として平面から引き剥がし/貼付けるという行 為は、無重力下においても通用する描画の為の演習であり、よって、 絵具の膜がキャンバス上であらゆる方向に捩じれ、歪み、複層的に 絡み合う様子は、さながらキャンバスという仮想空間に無重力を想 定した絵画、ということになるでしょう。
現在東京オペラシティアートギャラリーで開催中のproject Nにおい て発表している最近作では、より薄い別々の2色の塗膜を合わせて、 裏表の二面性を持たせるように1枚に仕上げた膜を、キャンバスか ら大きくはみ出すように貼付し、その余剰部分をまるで折り紙のご とく折り返しています。そうすることで、裏返った部分が別の色を 見せ、くっきりとした2色の画面構成が生まれます。一見単純な色 面構成にしか見えませんが、膜の折り返し部分が緩く膨らんでいる 様子や、重ね合った部分が僅かに断差を生じている様子など、その ディテールには作家の手作業の痕跡が残り、関口の作品でしかあり 得ない独自性となって表れているのです。
そして、今回の個展で発表される最新作では、より一層、膜でしか 成し得ない表現を新たに試みています。金属板をパネルに張った面 に、絵具の断片や膜を添付しています。一見、従来の作品と何の変 化も無いように見受けられますが、実は、まるで紙片を掲示するか の様に、絵具の膜の四隅を強力な磁石によって留めているのみで、 完全には固定されていません。イメージが支持体によって固定され ていない、というこの作品の状態は、先述の、無重力下でも通用す る絵画という関口の考えを補強するものとして、非常に興味深い展 開であるように思えます。
今後の構想ではガラスに色の膜を圧着させた作品など、色の膜を破 り、折り、捻って作る従来の手法から、更に発展させた作品へと新 たな展望を仄めかしており、今展覧会はその大きな前哨となる事で しょう。つきましては本状をご覧の上、展覧会をご高覧賜りますよ う何卒よろしくお願い申し上げます。  

敬具
2012年4月
児玉画廊 小林 健

レセプション: 7月7日午後6時より


全文提供:児玉画廊 | 東京
会期:2012年7月7日(土)~2012年8月11日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:児玉画廊 | 東京
最終更新 2012年 7月 07日
 

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