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岩崎宏俊:Between Showers
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 5月 13日

"Between Showers" (2009)| 2min 35sec, video installation | copyright(c) Hirotoshi IWASAKI | courtesy of Gallery Terra Tokyo

copyright(c) Hirotoshi IWASAKI | courtesy of Gallery Terra Tokyo

Artist Statement for Between Showers
「あれはいったいつだったか、夕立のような突然の雨が何日も続くことがあった。街行く人は足を止め、一様に空を見上げていた。それまで流れていた時間がほんの少しだけ止まったように思えた。雨の合間に人はいったい何を思うのだろう。そんなぼんやりとした疑問を持ちながら、私は雨が降る度にグレーの光景を眺めてばかりいた。
雨の光景を眺めていると不思議な気分になってくる。色々な記憶が浮かんでは波紋のように広がって消えていく。記憶は曖昧だから、波紋が重なるようにいくつかの記憶が混ざったり、なぜか見たこともないはずの幼い自分自身が傘をさしてる後ろ姿などのヴィジョンが紛れ込んでいたりもする。雨宿りをしている庇の先は、打ちつける激しい雨でまっ白く、そこはこではないどこかのようで、そんな雨の景色をスクリーンに記憶の景色が紛れ込んでくると、私は視線を通して世界を漂うちに自分の記憶のなかを漂っていたのか、それとも記憶のヴィジョンを通して世界のなかに入り込んでいたのか分からなくなってしまった。」
Artist Statement
「私にとってアニメーションとは時間の魔術だ。私は商業的なアニメ等のアニメ一般ではなく、自分の考える表現の手段として、このアニメーションの術に関心を持っている。アニメーションの術とは出来事(動き)の創造だ。映画は出来事を撮影するが、アニメーションにおいて出来事はスクリーンの上で初めて誕生する。私はこの術を用いて現実の中にもうひとつの時間を作り出す。それはこでも、あそこでもない、存在と非存在の間にあるような、「どこでもない場所」である。日常の中にこの「どこでもない場所」が現れると、それまで流れていた時間が止まり、そこに別の時間が流れ始まる。」

岩崎の作品は、身近なモチーフを用い、木炭やコンテで紙に描かれたシーンを一枚一枚重ね、アニメーションという手段によって表現される。それは時にプロジェクターによって大きく映写されるものであったり、小さなスクリーンに映し出されるものであったりするが、「時間の中にもうひとつ別の時間をつくりだす」というコンセプトによって創り出される「新しい時間」つまり作家にとっての「どこでもない場所」は、時間軸の交差した場所である。私たちは岩崎の作品「どこでもない場所」がそこに生まれる。

岩崎宏俊Hirotoshi Iwasakiは1981年茨城県水戸市生まれ。206年多摩美術大学美術学部情報デザイン学科卒業、208年東京藝術大学大学院修士課程先端芸術表現専攻修了。

※全文提供: ギャラリー・テラ・トーキョー

 

最終更新 2009年 5月 30日
 

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