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北島敬三:PORTRAITS
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 4月 30日

© Keizo KITAJIMA | Courtesy of RAT HOLE GALLERY | copyright(c) Keizo KITAJIMA

© Keizo KITAJIMA | Courtesy of RAT HOLE GALLERY | copyright(c) Keizo KITAJIMA

1992 年より始められた本シリーズは実に17年にわたり続けられ、被写体となる人物を8×10のカメラで、ある一定の期間をおいて繰り返し撮影し、現在ではモデルの数は300人以上、作品の総点数は2000 点を超えています。今回はその中から3つのグループ作品、約14点が展示されます。

21歳の時に東松照明が主催する「WORKSHOP 写真学校」の森山大道教室に参加した北島は、翌年、森山大道らとともにギャラリー「イメージショップCAMP」を設立し、そこを拠点に写真家としての活動をスタートします。その後、日本写真家協会新人賞受賞、そして若干29歳の時に出した写真集『NEW YORK』( 白夜書房)で第8 回木村伊兵衛賞を受賞するなど、70年代、80年代を通じ、世界の都市の街頭に飛び込み、行き交う人びとを撮影する情熱にあふれたスナップ写真で高い評価を受けていきます。

「Koza 1975-1980」に始まり、「Tokyo 1979」、「New York 1981-1982」、「Eastern Europe1983-1984」と続いた北島の写真は『A.D. 1991』(河出書房新社)で洗練、ひとつの頂点にたどり着きます。しかし、崩壊直前のソ連の人びとを街頭や室中で正面から撮影した「U.S.S.R.1991」を転換点に、その真骨頂とみなされていたスナップ写真をいわば封印します。そしてソ連崩壊直後の1992 年より北島は大判カメラで新宿などの人のほとんどいないランドスケープを撮影する「Places」シリーズ、今回展示する「Portraits」シリーズをスタートします。

どの人物も白い背景、襟付きの白いシャツ姿、正面からの胸像という、同一の単純なルールに従って撮影されているこの「Portraits」の十数年間にわたって撮影された同一人物の写真を見ていると、奇妙な感覚に襲われてきます。例えばそれは、運転免許証の顔写真、あるいは録音された声など、確かに自分の顔であり声であるはずなのに、何かが違う、その違和感にも似た、いっそう深い困惑にとらわれます。これは、写真を見ることでしか体験できない感覚ではないでしょうか。北島の「Portraits」は、photography というものを初めて見た19 世紀の人々の驚きと恐れを、現代の私たちに思い出させてくれるはずです。

また、ラットホールギャラリーでは、展覧会開催に合わせ、北島敬三写真集『THE JOY OF PORTRAITS』を出版いたします。北島敬三のほぼ全ての仕事を網羅した全2巻、函入り、総ページ数872ページに及ぶ大著であり、これまであまり知られてこなかった北島の作品の全貌を見渡せるまたとない機会です。

※全文提供: ラットホールギャラリー

最終更新 2009年 5月 22日
 

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