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久保ガエタン個展:Madness, Civilisation and I
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Published: February 18 2012
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画像提供:児玉画廊 | 京都

画像提供:児玉画廊 | 京都

児玉画廊|京都では2月18日より3月24日まで久保ガエタン個展 「Madness, Civilisation and I」を下記の通り開催する運びとなり ました。 久保は、人が生活する上で暗黙の了解として共有して いる社会常識やスタンダードと目されている技術、学術といった ものに相容れず、「狂気」あるいは「オカルト」として排除され てきたマイノリティの思想や行為を題材とした作品を制作してい ます。

万有引力や地動説も当初は奇説であると蔑まれたように、文化的 歴史的な背景から飛躍した思想や発見は実証なくしては社会的に 受容されません。地域、文化的な特殊性があるにせよ学問の正統、 国家権力、宗教的見地などの社会的に大きな力を基準としてその 正否が判断されるのは、現代においても同様です。そして権力や 学問の変遷に従って「狂気」の在り方もまたいつの間にか変遷し、 それらの権威が、何をもって「狂気」であるとし、何をもって正 しいと判断しているのか、その判断基準を人々が盲信してしまう 危険性は、常に世の中に潜んでいます。ひょっとして気付かぬ間 に自分も「狂気」として分類されてしまうかも知れないという不安、すなわち「狂気」や「オカルト」だと思っていた事が社会常 識的に認められていけば、過去の自分の判断が逆に狂気的なもの にすり変わってしまうという可能性に対して、久保は、異端的な もの(Madness)、権力的なもの(Civilisation)、そして自己(I)、 という三態をモデルとした関係性を考察し、誰しもが正常である と信じている自己と「狂気」とが実は隣り合わせにある、という リアリティを示すための演習として作品を提示し警告を発します。 現在制作している作品シリーズ「Transmission」においては、そ の久保の独特の観点から、文明社会の象徴としての家電製品や音 響機器など身近なテクノロジーに「狂気」と「オカルト」にまつ わる逸話を重ね合わせます。目に見えない何らかの力が作品を媒 介として振動や周波に変換されてこちらに作用を向けている (Transmissionの)ような、得体の知れない不気味な雰囲気を醸し 出す装置のシリーズで、これまで「Sky Science Laboratory」 「家電のポルターガイスト」「Inverse Panopticon」というイン スタレーションを3作品発表していますが、児玉画廊での初個展 となる本展では「Inverse Panopticon」及び、新作「Briareo」他 を展示、発表致します。

「Inverse Panopticon」は、ミシェル・フーコーによって社会に おける大衆と権力の関係性の例えとして引用されたジェレミ・ ベンサムによる監獄システム「パノプティコン」(中心にある監視 塔に対し全ての房の間口が向けられており、看守は一瞥で全囚人 を監視することができる放射状の監獄)の構造、周波で地震を発生 させるといった奇説や交流電流で有名なニコラ・テスラによるオ カルト的な大規模通信装置のアイデア「世界システム」などのい くつかのエピソードから連想された、放射形状と低周波によるイ ンスタレーションです。作品内部の装置から唸るように発せられ る正弦波音が音程をどんどん落として、次第に低周波音、超低周 波音へと変化し耳では認知できなくなるのと反比例して強度を増 していく低周波数振動が作品の構造体を共振させ、見る者の体に までもビリビリ-ガタガタと振動が伝達します。

新作「Briareo」(ドン・キホーテが風車を巨人と思い込んで立ち 向かうという有名なエピソードで出てくるギリシャ神話の100の 腕と50の頭を持つ巨人の名)では、巷に流布している反風力発電 論が原発推進派の陰謀なのではないかという仮説から着想を得て います。風力発電に対してクリーンかつ充分に需要を賄うエネル ギー供給策であるとするポジティブなイメージと、それに相反し て低周波振動の公害源あるいは自然任せの非効率なシステムとし てのネガティブなイメージが対立し、一体どちらの主張が正しい のか、一個人レベルでは確証を得られないがゆえに、憶測が暴走 して陰謀論や荒唐無稽な「オカルト」へと結びついていく事例と して、久保は関心を持っています。作品本体は3メートル径ほど の巨大なプロペラをモーターに取り付けて風車に見立て、羽が風 を切る音と回転の摩擦音が風車の振動公害と同様の仕組みで騒音 と振動を発しています。

その他の既作「Sky Science Laboratory」では雨乞い儀式の現代 への再生、「家電のポルターガイスト」ではその名の通りポルタ ーガイストを題材として音や振動など視覚では認識出来ない現象 を発生させるシステムですが、それら一連の自作について「見え ないエネルギーが襲ってくることの象徴」と久保が言うように、 作品を前に、その不気味な振動と思いがけない装置の挙動でまさ に未知のエネルギーに晒されているかのような戦慄を覚えますが、 ふと客観視すれば加速のピークとその後の失速がなんとも馬鹿げ た空虚なもののよう思え、「狂気」だ「オカルト」だと久保が大 仰に吹聴することにまんまと乗せられてその気になった自分が滑 稽にすら思えます。しかし、そのようにして「狂気」と自己のす り替えが知らず知らずに行われているのだとしたら、、、と思考 はぐるぐると巡ります。

「狂気」とは一個人のイマジネーションが一方向に対して極度に 振り切れた状態であると言えるでしょう。久保の例えを借りるな ら、有名なシュヴァルの理想宮を見て、そこに「狂気」を感じず にはいられません。しかし同時に底知れぬエネルギーと無尽蔵の イマジネーションには賛嘆せざるを得ない、そういった人智を超 越したものを生み出す原動力であることは確かです。社会常識と 呼ばれるものに対して益であるか不益であるか、あるいは道義的 であるか否か、その点における判断とは別に、文明の発展途上の あらゆる局面で「狂気」が新たな道を切り開いてきたのかもしれ ません。とすると、一体「狂気」とは、「オカルト」とは?

同時開催: Kodama Gallery Project 30 盛井咲良「パーティーナイト・オン・ザ・ロック」

全文提供:児玉画廊 | 京都


会期:2012年2月18日(土)~2012年3月24日(土)
時間:11:00-19:00
休日:日・月
会場:児玉画廊 | 京都

Last Updated on February 18 2012
 

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