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木村光佑 展:イメージのコラージュ
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Published: January 03 2012
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木村光佑《アウト オブ タイム 24》| 1970 | コラージュ 76.5×54.5 cm

このたびYOD Galleryでは、木村光佑(Kosuke Kimura, b.1936)氏の個展を開催いたします。

日本経済の高度成長と同時に美術の大衆化が顕著となる中、木村氏は30歳を越えた1968年に作家としてデビューを果たしました。シルクスクリーンや写真製版をはじめ多様な製版・印刷の最新技術を駆使し、現在社会の虚像と実像入り交じる様々なイメージを重ね合わせることで、情報過剰な同時代人の視覚的経験を作品化してみせた木村氏は、デビューと同時に「時代の申し子」として立て続けに国際コンクールでの受賞を重ねていきます。一方で木村氏の自由な版表現への挑戦は、当時の日本版画界においては異色であり、版画の範疇や概念に対する議論を巻き起こしました。

木村氏は1955年京都市立美術大学(現:京都市立芸術大学)にて日本画科へ入学、卒業後は広告代理店にてグラフィックデザイン制作に携わった後、デザイン会社を設立しデザイナーとして活躍しながら作家に転向いたしました。この異色の経歴が規定概念に捕われない木村氏の自由な版表現の根源となっております。日本画におけるモノの捉え方、彩色法、様式美はイメージを重ね合わせる独特の作品作りにつながっており、画面の秩序化への関心やレイアウト的な構図への志向性は広告を通じて培われたものであります。印刷に長く携わってきた木村氏は、版画をジャンルとしてではなく一つのメディアであると突き放し、また日本的な版画観に捕われない思考によってアクリルやステンレス・ガラス・琺瑯などの異素材や立体物へも果敢に挑戦し続けてきました。規定概念に捕われず、制作しつづける情熱と版画をメディアの一種として突き放す冷静さが、木村氏の最大の魅力といえるのではないでしょうか。

1987年、ノーベル化学賞を受賞した福井謙一氏からの要請にて、京都工芸繊維大学工芸学部教授に就任しました。大学教授として若い才能を育てる傍ら、「科学と芸術」の融合について探求しつづけ、1998年には第9代学長に就任します。科学に芸術の持つ感性や感覚を取り入れる事によって、未来の科学者たちに多角的な視点を問いつづけました。木村氏は作品においても日常的な現実を反映させ続け、作家でありながら常に社会と関わり続けることにより、1999年には紫綬褒章を受章する等の社会的な貢献もしてきました。今もなお「情熱と冷静」「科学と芸術」「作家と社会」など対局にあるモノのバランスを保ちながら、常に自分の位置を確かめ続けているのでしょう。

当展では、初期のアッサンブラージュ作品「OUT OF TIME」から新作の「イメージのコラージュ」まで、木村氏の過去から現在の作品を同時ご紹介いたします。時代を超えた新しさ、70歳を超えてなお制作し続ける力は閉塞感漂う現代へのメッセージとなりうるのではないでしょうか。また会期中イベントとして木村氏と安來正博氏(国立国際美術館 主任研究員)のトークイベント開催いたします。是非この機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

[作家プロフィール]
木村 光佑(Kosuke Kimura)

1936 大阪に生まれる
1956 京都市立芸術大学卒業
〈主な受賞歴〉
1970 英国国際版画ビエンナーレ展・メモリアル賞
1971 ジャパンアート・フェスティバル大賞
第9 回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展・国際大賞
現代国際彫刻展・コンクール賞
1972 ノルウェー国際版画展・国際大賞
1973 世界版画コンクール・国際大賞
1977 現代日本彫刻展・大賞
1978 現代彫刻展・東京国立近代美術館賞
1981 現代日本彫刻展 ・群馬県立近代美術館賞
1983 ソウル国際版画展・優秀賞
1984 ポーランド国際版画展・ゴールドメダル賞
1992 国際芸術文化賞、大阪市文化功労賞
1994 京都府文化賞・功労賞
1996 京都美術文化賞、紺綬褒章
1999 紫綬褒章
2001 名誉博士号〈芸術学〉授与(タイ・国立マハサラカム大学)
京都市文化功労賞

〈主なパブリックコレクション〉
東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、
箱根・彫刻の森美術館、和歌山県立近代美術館、
栃木県立美術館、町田市立版画美術館、福岡市美術館、
京都市美術館、北海道立美術館、群馬県立近代美術館、
宇都宮美術館、東広島市立美術館、ニューヨーク近代美術館、
サンフランシスコ美術館、フィラデルフィア美術館、
シンシナティ美術館、リュブリアナ美術館、クラコウ美術館、
フレドリックスタッド美術館、ブラッドフォード美術館
イビザ美術館、日本文化館(ローマ)、
文化庁、外務省、大阪府、京都府、大阪市、京都市、宇部市、
龍野市、茨木市、黒部市、加悦町(京都府)、他

全文提供:YOD Gallery


会期:2012年1月14日(土)-2012年2月4日(土)
時間:12:00-19:00
休日:日・月曜
会場:YOD Gallery

Last Updated on January 14 2012
 

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