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野見山暁治 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 12月 21日

《風の便り》1997年、石橋財団石橋美術館

昨年90 歳を迎えた野見山暁治は、日本の洋画界において、最も長く活動を続けてきた画家の一人ですが、絵を描くことへの情熱が衰える事はなく、現在も新たな境地を見出すべく活発な創作活動を続けてい ます。

鮮やかな色彩と大胆な筆遣いによる独特の表現は、みずみずしく軽やかでありながら、同時に骨太な力強さをも感じさせます。しかしその 底には、どこか謎めいた不思議なものの気配が漂い、心象風景とも感じさせるその作風は、多くの人々の心を魅了していると言えます。

ブリヂストン美術館は、野見山が滞欧中の1958 年に、早くも彼を紹介する展覧会を開催し、それは第2回安井賞を受賞するきっかけとなりました。この展覧会から半世紀を経て開催される本展では、戦前の作品から、戦後の12年近いヨーロッパ滞在を経て現在に至るまで、野見山の自由奔放でエネルギーに溢れた絵画世界が形成されていくプロセスと、さらに表現の幅を広げようとする画家の姿勢を展観します。代表作や初公開となる作品など、総数約110点をご紹介いたします。

全文提供:ブリヂストン美術館


会期:2011年10月28日―2011年12月25日
会場:ブリヂストン美術館

最終更新 2011年 10月 28日
 

編集部ノート    執筆:田中みずき


《風の便り》1997年、石橋財団石橋美術館

   若い年代にこそ観て欲しい展覧会。この作家の作品は、パワフルで、切なくて、理知的だ。画家の名は、野見山暁治。長年東京芸術大学の教職に就き、画業のみならず文筆活動においてもつとに知られる画家である。
   本展は、そんな野見山の画業の全貌を伝えるものだ。まず並ぶのが、若い頃の西洋の画家の作風を学んでいた時期の作品、戦争体験を反映させた作品、そして身近な廃鉱を描いた作品。その後、フランスに渡り抽象化や色彩の変化を遂げた作品や東洋絵画へ目を向けるようになった後の作品、さらには今年の東日本大震災をきっかけとして描かれた作品。画家の人生の流れに沿って作品を並べた本展からは、野見山が作品制作といかに向き合い、どのように作品を純化させてきたのか、手に取るように分かる。
   渡仏以降は抽象化が進み、さらに近年では、抽象画でありながら、「いたずらな部屋」「見たような景色」「これだけの一日」「いつかは会える」「誰にも言うな」といったタイトルともに、油彩画なら筆致の勢いや、余白の間、塗りこめた平坦さなどが絶妙に組み合わさる画面、版画なら色彩や構成で生み出される世界を観ていると、具象よりも鮮明に描かれているものが伝わってくる点が圧巻である。
   展覧会会場では、椅子に腰かけてじっと絵を眺め続ける観客が数多く見受けられた。作品に向き合い、まっすぐ見つめてみるべき展覧会だろう。


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