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桝本佳子:パノラマのうつわ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 11月 09日

《馬/壺》2011 | 165×95×102cm | 陶 | 兵庫県立美術館 撮影:小笠原翔 | Copyright© Keiko Masumoto | 画像提供:INAXギャラリー

見上げるような高さ1.65 mの陶大壺の天地をつらぬくように、等身大の仔馬が半身飛び出しています。白土に赤絵の艶やかな、まるで絵付け模様から飛び出してきたかのような幻想性とダイナミズムに圧倒される作品です。(「馬/壺」(2011))。また「兵庫県/皿」(2011)は、兵庫県の立体的な地形の上に古地図の絵皿が乗り、グーグルマップのようにポップアップした地名が読み取れる楽しさに、思わず微笑んでしまいます。

桝本佳子は、「日本の陶芸」をテーマに誰もが知っているモチーフや、焼成方法、釉薬などの要素をベースに、独特の現代的発想を組み合わせて作品をつくります。青磁の壺に船、備前焼の壺に五重の塔など、いずれもダイナミックでユーモアがあり、凝視したくなるような精緻な美しさを備えています。壺や皿だと思ったかたちの意外な展開に驚きと感嘆の声が上がる展覧会です。

桝本佳子は2006 年京都市立芸術大学大学院を修了後、ミッドタウンアワードアートコンペ準グランプリ受賞(2008)、国立近代美術館工芸館「装飾の力」展(2010)、豊田市美術館「新・陶・宣言」展(2011)、兵庫県立美術館「美術の中のかたちー手でみる造形やきもの変化」(2011)と活躍を続けています。作品は幼少より親しんだ茶道に端を発し、道具立てや見立ての考え方、長じては宮川香山や真葛焼きなど日本近代輸出陶器にそのイメージの源泉があります。各種陶芸技法を駆使してつくるマチエールやディティール、取り合わせ、組み合わせの妙味には、若い作家の等身大のセンスやユーモアが溢れ、見る者を魅了します。

今展では、観光地に設置してある、部分的にデフォルメされた立体パノラマ地図をモチーフにした新作「町/壺、皿」を中心に展示いたします。どうぞ会場でお楽しみください。

桝本佳子 Keiko Masumoto
1982 年生まれ
2007 京都市立芸術大学大学院修士課程陶磁器専攻修了
2011 University of the Arts(米フィラデルフィア)ゲストアーティスト

award
2005 京都市立芸術大学制作展同窓会賞
2006 国民文化祭やまぐち陶芸展文部科学大臣賞
2007 京都市立芸術大学大学院修了制作展大学院市長賞
2008 東京ミッドタウンアワードアートコンペ準グランプリ
2009 京展彫刻部門館長奨励賞
トーキョーワンダーウォール立体・インスタレーション部門大賞

exhibition
2004 京都市立芸術大学陶磁器専攻陶7人展(クラフトギャラリー集/京都)
        個展「くらしのなかのやきもの」(京都芸大ギャラリー)
2005 グループ展「京都→ソウル」(toppohouse gallery/ソウル)
        グループ展(ブンパカ/大阪)
2006 個展「SEGMENT」(京都芸大ギャラリー)
        グループ展(cafe momi/京都)
         「新世代の交感」(愛知県立陶磁器資料館)
        国民文化祭やまぐち陶芸展(伊藤博文邸/山口)
2007 陶4 人展(ギャラリー風紋舎/京都)
2008 個展(石田大成社ホール/京都)
2009 グループ展「FIX」(元立誠小学校/京都)
        個展(太陽事務/京都)
        グループ展「フェミニック・セラミック」(渋谷西武百貨店)
2010 「現代工芸への視点ー装飾の力」(東京国立近代美術館工芸館)
        個展「パノラマ陶の風景」(INA ガレリアセラミカ/銀座)
         トーキョーワンダーウォール受賞者展(東京都庁内都政ギャラリー)
         TKG projects #1 個展(TKG Editions 京都)
        個展(INAX ライブミュージアム/常滑)
        個展(gallery Jin/東京)
         「melange」(イムラアートギャラリー/京都)
2011 美術の中のかたちー手で見る造形(兵庫県立美術館)
2012 新・陶・宣言(豊田市美術館)

※全文提供: INAXギャラリー


会期: 2011年12月2日(金)~2011年12月26日(月)
会場: INAXギャラリー2
アーティスト・トーク:  2011年12月2日(金) 18:00~19:00

最終更新 2011年 12月 02日
 

編集部ノート    執筆:田中みずき


《馬/壺》2011|165×95×102cm|陶|兵庫県立美術館 撮影:小笠原翔|Copyright© Keiko Masumoto|画像提供:INAXギャラリー

日常生活で触れている陶芸作品の魅力を存分に感じさせてくれるのが、今回の展示だ。展示されているお皿や花瓶等には、建築物等が付けられ、街をイメージした作品になっている。並べられているのは、白く四角い台上。よく見ると、展示台にはボタンがついている。押してみると、お皿にデザインされた船から煙が出たり、空と街並を模した花瓶に光が灯ったり。何が起きるかわくわくしながら眺める楽しさと、光によって陶芸作品の色の美しさに気付かされる驚きとがあり、新鮮だ。

こうした展示方法は、見世物を連想させる。仕掛けで人を楽しませる展示である。近代の頃、西洋から美術の概念や油彩画の技法を得て作品が作られ、展示が行われる際、日本では「見世物」として楽しまれてきた。その流れも感じさせる、作者の作品展示への問いかけの姿勢も興味深い。様々な世代の鑑賞者が楽しめるだろう。


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