杉浦康平氏は1950年代後半に、建築を学んだ異色の逸材としてデビューを果たして以来、デザイン界にかつてない領域を開拓してきました。とりわけ、非広告系のヴィジュアルコミュニケーション・デザインを初めて本格的に追究したことが特記されるでしょう。また、1980年代からは、アジアの図像研究に目覚ましい成果を残しており、デザイン作品においてもアジア固有の世界観を見事に映し出しています。
杉浦氏は、日本を代表するグラフィックデザイナーとして半世紀を超える活躍を繰り広げ、毎日芸術賞、紫綬褒章をはじめ数々の賞を受賞。その功績は国内外に大きな影響を与え、今日に至っています。
本展は、杉浦氏がとりわけ心血を注いで取り組んだブックデザインを中心にすえ、代表作、および半世紀を超える仕事を一望し、独創力にみちたデザインの核心に迫ることを意図しています。
日本のブックデザインを牽引してきた、初期から現在に至るまでの膨大な造本作品の中から、重要な作品をテーマごとに体系的に展示。従来の本づくりの概念を覆す斬新な発想による、幾多のデザイン語法、また、時流を超越する普遍的な造形理念と深い精神性を、多元的に浮き彫りにします。
「紙の本」の制約を乗りこえる、宇宙空間に匹敵するデザイン世界の創出。杉浦氏による不断の挑戦は、今日の「電子本」の登場をも予見した、先見性あふれる軌跡ともいえます。
杉浦氏の展覧会は海外を含めて幾つとなく行われてきましたが、全体像を把握できる展観は日本初となります。類いない杉浦デザイン世界を俯瞰すると同時に、圧倒的な創造力を体感できる展覧会となるでしょう。
杉浦康平(すぎうらこうへい) グラフィックデザイナー 神戸芸術工科大学名誉教授 1932年 東京生まれ 1955年 東京芸術大学建築学科卒業 1964-67年 ドイツのウルム造形大学客員教授 1989-2002年 神戸芸術工科大学教授 2010年4月より 神戸芸術工科大学アジアンデザイン研究所所長
1950年代後半からポスター、雑誌、レコードジャケット、展覧会カタログなど、文化的活動を主題にしたデザインを手がけ、70年ごろよりブックデザインに力を注ぐ。 同時に、変形地図「やわらかい地図」のシリーズ、文字や記号・図像などを重層させた視覚伝達のかたちを独自の手法でまとめあげた。 デザインの仕事と並行してヴィジュアル・コミュニケーション論、曼荼羅、宇宙観などを中心とするアジアの図像研究、さらに知覚論、音楽論などを展開し、著作の刊行を続けている。広範な図像研究の成果をデザイン手法に取りいれ、多くのクリエーターに影響を与えた。 また、アジア文化を紹介する展覧会の企画・構成や造本を数多く手がけ、国内外での講演を通して、アジア各国のデザイナーとも密接に交流する。
[主な受賞歴] 日宣美賞、毎日産業デザイン賞、野間出版文化賞、文化庁芸術選奨新人賞、毎日芸術賞、織部賞、ライプツィッヒ装幀コンクール特別名誉賞などを受賞。紫綬褒章受章。 [主な著書] 『日本のかたち・アジアのカタチ』(三省堂)、『かたち誕生』、『生命の樹・花宇宙』(以上、NHK出版)、『宇宙を呑む』(講談社)、『宇宙を叩く』『多主語的なアジア』『アジアの音・光・夢幻』(以上、工作舎)、『文字の美・文字の力』(誠文堂新光社)、『アジアの本・文字・デザイン』、『疾風迅雷――杉浦康平雑誌デザインの半世紀』(以上、DNPアートコミュニケーションズ)。
関連イベント 杉浦康平展シンポジウム 「杉浦康平の脈動するブックデザイン」 [出演] 杉浦康平 長澤忠徳(本学デザイン情報学科教授) 寺山祐策(本学視覚伝達デザイン学科教授) 原 研哉(本学基礎デザイン学科教授) [日時]2011年11月14日(月)16:30~18:00(予定) [会場]武蔵野美術大学 美術館ホール ※その他、杉浦氏によるレクチャーを予定 詳細はウェブサイトをご確認ください
関連情報: ギンザ・グラフィック・ギャラリー第305回企画展 「杉浦康平・マンダラ発光」 杉浦康平氏の膨大なブックデザインの作品群の中でも格別の光彩を放ち、その系譜の頂点に位置する「マンダラ」を主題にした豪華限定本。『伝真言院両界曼荼羅』、『天上のヴィーナス・地上のヴィーナス』、『西蔵<曼荼羅>集成』の3冊を、「日本の密教+イタリア(ルネッサンス)+チベット・マンダラの融和」という杉浦氏独自の発想をもとに、パネル・映像を加えて紹介・展示する。 会 期:2011.12.1(木)-12.24(土) 開館時間:11:00~19:00(土曜:18:00閉館) 休 館 日:日曜、祝日/入場料:無料 会 場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg) 〒104-0061 中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル tel:03-3571-5206 / fax:03-3289-1389 www.dnp.co.jp/foundation
※全文提供: 武蔵野美術大学 美術館・図書館
会期: 2011年10月21日(金)-2011年12月17日(土) 会場: 武蔵野美術大学 美術館展示室
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