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第2回中之島映像劇場 日本のビデオアート―1980年代―
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 10月 20日

出光真子≪洋二、どうしたの?≫1987年

国立国際美術館では1989年から映像作品の収集に取り組み、常設展示場で公開していました。近年、中之島に移転してからは定期的な上映会の形を取っています。さらに2008年には「Still/Motion 液晶絵画」展を開催し、絵画と映像とが交錯し合う現代の美術表現に光を当てました。さらなる展開を図ろうと、今年、2011年の3月から「中之島映像劇場」と名付けました。メディアに立脚した、言葉の最も広い意味での「美術と映像」の歴史的な変遷を探り、現代の状況の解明を試み、さらには今後の動向をも予示出来ればと願っています。

「中之島映像劇場」の第2回は、当館保管作品を中心として、1980年代の日本のビデオアート作品を上映します。

誕生期(1960~70 年代)に続くビデオアートの1980年代は、興隆と高揚の時期であったと考えられます。
・(現在ほどではないにしても)カメラやVTR が普及し、技術的に細かい編集が可能になったこと。
・そうした装置システムを使える環境は容易には得られませんでしたが、美術系の大学などがビデオ機器を揃え、作家の育成に乗り出したこと。
・1980年、ビデオを専門に扱うビデオ・ギャラリーSCAN が誕生し、登竜門となる公募展を開催し、若手の作家の育成とともに、国際的な作家の交流を推進したこと(ビル・ヴィオラやゲイリー・ヒルの滞日制作)。
・ビデオ機器のメーカーが主催するコンテストが、アマチュア(ホームビデオ)とアーティストとに分け隔てのない門戸を開いたこと。
・美術館でもアンデパンダン形式やテーマ展、作家展という形でビデオアートの展観を進めたこと。例えば、大阪府立現代美術センター(1980 年以降開催)、福岡市美術館(1981 年、「パフォーマンス・イン・ビデオ」展、ほか)、富山県立近代美術館(1983 年、「第2 回現代芸術祭―芸術と工学」)、「第二の環―80 年代ビデオへの視点」の各地巡回(1984 年)、ほかです。特に、1984 年に東京都美術館で開催されたナムジュン・パイク展の影響は絶大であったと思われます。
・ビデオやメディア機器を使った表現に特化するフェスティバルが多数開催されるようになったこと(1985 年の「第1回ふくい国際ビデオ’85 フェスティバル」、「ハイ・テクノロジー・アート国際展 1986」、ほか)。

こうした状況下に多くの新人が育ち、あるいは、誕生期からの作家の仕事の展開が見られました。ビデオテープが簡単に郵便などで送付出来ることもあずかり、国際的な交流が盛んになり、この国の作品が海外の展覧会やフェスティバルにおいて上映されていきました(時には作家自身も参加しました)。

本上映会は、当館で昨年9 月に巡回上映を行った「Vital Signals:日米初期ビデオアート上映会―芸術とテクノロジーの可能性―」に続くプログラムになります。日本のビデオアートの充実期である1980 年代。本プログラムはその一端であるいくつかの傾向をかろうじて垣間見るにすぎません。

とはいえ、ビデオによる映像制作が簡易化し、美術と映像との複合が一般化した現在、今回上映する作品群が過去の仕事の再発見と評価、位置付けにつながり、同時に現在の状況を批判的に捉える契機となることを願うものです。

【上映作品一覧】

A プログラム (60 分53 秒+解説20 分)
斎藤信 《Frame by Frame DO-OR》 《Frame by Frame TO-W-ER》 (1984 年/8 分)
斎藤信 《Locus》 (1985 年/3 分)
ビジュアル・ブレインズ(風間正+大津はつね) 《One Two 3 Times 3》 (1986 年/1 分38 秒)
ビジュアル・ブレインズ(風間正+大津はつね) 《Rec Zone》 (1988 年/6 分28 秒)
ビジュアル・ブレインズ(風間正+大津はつね) 《De-Sign 1(訓練)》 (1989 年/9 分35 秒)
伊奈新祐 《FLOW (2)》 (1983 年/6 分)
伊奈新祐 《Sha》 (1986 年/6 分)
島野義孝 《カメラと、私のカメラ》 (1983 年/8 分3 秒)
島野義孝 《ころがすこと》 (1984 年/4 分47 秒)
島野義孝 《テレビドラマ》 (1987 年/7 分22 秒)

B プログラム (73 分)
寺井弘典 《I SAY...》 (1983 年/5 分)
寺井弘典 《1・1/2》 (1984 年/6 分50 秒)
出光真子 《グレート・マザー 幸子》 (1984 年/18 分50 秒)
出光真子 《洋二、どうしたの?》 (1987 年/18 分)
出光真子 《清子の場合》 (1989 年/24 分20 秒)

※全文提供: 国立国際美術館


会場: 国立国際美術館 地下1階講堂
会期: 2011 年10月22日(土)13時からAプログラム、15時からBプログラム
                       10月23日(日)13時からBプログラム、15時からAプログラム
             ※Aプログラム冒頭に20分程度の解説付き
入場無料/全席自由/先着130名(午前10時から整理券配布)

最終更新 2011年 10月 22日
 

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