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X氏写真コレクション展Ⅱ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 10月 19日

画像提供:ときの忘れもの

X氏が長年かけて蒐集した重量感溢れるゼラチン・シルバー・プリント作品20点を出品します。
X氏コレクションの特徴は、写真界のピカソとまで称揚されたエドワード・ウェストンの1930年代を代表する「砂丘」を除いて全てが人間を捉えた写真作品ということです。誰もが知っている著名人から無名の人々まで、多くの肖像写真が目を奪います。

<カーシュに撮られることが世界のセレブリティであることの証である>とまで言われたユーサフ・カーシュによるホアン・ミロに始まり、ファッション写真家、ドキュメント写真家として高い評価を得たリチャード・アヴェドンが撮った濱谷浩(写真家)の珍しいポートレート、1960年代のアメリカ現代美術の興隆の真っ只中を伴走したウーゴ・ムラスのアンディ・ウォーホルやジャスパー・ジョーンズのポートレートは新しい美術が生み出されて行く瞬間を捉えた貴重な記録写真でもあります。

細江英公の撮った三島由紀夫や土方巽、そして五味彬の撮った村上麗奈、日本の肖像写真界の第一人者だった吉川富三による奥村土牛(日本画家)や谷崎潤一郎(小説家)の毅然たる風貌は、それぞれが時代の鏡ともいえる象徴的な意味さえ獲得しています。1980年代のメジャー雑誌の表紙を席捲したハーブ・リッツの男達の肖像の放つ力強い造型は見るものを圧倒します。

アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロベール・ドアノーらとともに20世紀を代表するフランスの写真家エドゥアール・ブーバが撮った恋人たちの姿はいかにもパリのエスプリを感じさせますし、対照的にジョージ・タイスが撮ったアーミッシュの少年達はヨーロッパの桎梏から逃れ新天地アメリカを目指した人たちの夢を伝えています。

ナチュリストの家族や少女たちを暖かな視線で撮り続けるジョック・スタージスの銀塩写真の代表作2点、日本にも滞在したことのあるフランセス・マーレイによる双子の子供達、広告写真から東京大学所蔵の標本コレクションを撮影するなど幅広い活躍を続ける上田義彦のポートレート写真など、いずれも詩情あふれる作品ですが、X氏コレクションの凄みのあるところはそういう写真とは対極にある激しい表情の秀作を含んでいることでしょう。
愛娘エヴァのヌード写真でスキャンダラスな議論を巻き起こしたイリナ・イオネスコの作品はモノトーンの中に華麗なバロック的世界を現出させていますし、死体やフリークスなどの特異な被写体とエロティックかつ怪奇的な表現方法でスキャンダラスな作品を制作しているジョエル=ピーター・ウィトキンの作品はX氏コレクションの白眉といってもいいでしょう。

※全文提供: ときの忘れもの


会期: 2011年10月21日(金)~2011年10月29日(土)
会場: ときの忘れもの

最終更新 2011年 10月 21日
 

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