| EN |

藤原裕策:Still waters run deep
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 10月 18日

Copyright© FUJIWARA Yusaku | Courtesy of Ohshima Fine Art

藤原裕策の作品は、版画用の板に、まずアクリル絵の具で着彩して乾いてから、彫刻刀でフォルムを浮き出させる という技法によって出来上がっている。色や形を上へ重ねていく通常のペインティングとは逆に、一度塗った色面をどんどん削り取ることで、色や形を成り立たせていく。

作家には、いわばペインターとしての人格と、木彫家としてのそれが同居しているのだ。
一度彫り始めたらもう色は足さない。
理詰めで下準備をするのではなく、筆を走らせる最初から作品の最終ゴールを想定しつつ、色を塗る段階も、彫刻刀で彫り出す時も即興性のある過程を経る。
この独創性に満ちた表現方法は、藤原の言う「はっきりと確認できないもの、見えない物などの魅力」への追及には有意義なのであろう。
また、かのミケランジェロが言ったとされる「大理石に埋まっている人物をただ取り出すのみ」という逸話の様に、作家の彫り出す造形は、元からある人やモノを平らな画面から掘り起こす職人のような作業なのかもしれない。

今回の作品群は、ペインティングと彫刻の要素を併せ持つ画面にさらに筆と彫刻刀による線描(=ドローイング)の技巧を加味したことによって変化に富んだ特質となり、より力のある創作物を作り上げた。
そしてもちろん、藤原がテーマとしている“生や死など全てを内包した或る大きな力”の有り様を強く意識した個展である。

この現代の大きくて複雑な世界から、一瞬の出来事や、判り難い表情を丹念にすくいあげ、我々日本人の美意識を改めて‘かたち’に表してくれる藤原裕策というアーティストの使命を見極めていきたい。

※全文提供: Ohshima Fine Art


会期: 2011年10月15日(土)~2011年11月5日(土)
会場: Ohshima Fine Art

最終更新 2011年 10月 15日
 

関連情報


| EN |