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小野耕石: 削柱移植
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 10月 14日

《鱗頭》 2011年 | 頭蓋骨、インク | h150×w130×d270mm | Copyright© Kouseki Ono | 画像提供:アートフロントギャラリー

小野耕石はスクリーンプリントという技法を使って、同じ版で色を変えながら、同じ場所に直径数ミリのドットを100回も刷ってできた小さなインクのタワー(柱)で構成された平面作品で知られています。その制作は時間と根気の必要な作業です。2009年の資生堂ギャラリーの「art-egg」展の床に展示されていた巨大な平面作品がその代表的なパターンで、見る角度によって見えるインクの柱の色層の変化がその特徴です。版画は本来同じ版で何枚も作品を作ることを前提としているのに対して、小野の作品では同じ版で色を変えながら刷り、しかも100回も同じポイントに刷ることで決して同じようにインクは盛り上がらないため、同一の版からでも違った作品が出来上がってくることになります。

これら平面作品に対して、小野はこのインクの柱を使って別の立体作品を同時期から作り始めています。作家は自身の造語でこの手法を「削柱移植」という名称で呼んでいます。小さなドットのタワー(柱)を平面から削り取って、別の支持体に移植する手法です。この手法で最初に出来上がった作品は蝉の抜け殻にピンセットでインクの柱を貼り付けたものでした。移植する前の平面作品群は、ある意味、版画という伝統的技法から技法を別のベクトルに転換させるという所作だったと思います。一方「削柱移植」ではまったく新たなクリエイティビティの次元が開かれます。つまり、例えば色鉛筆という初めて使う道具がそこにあったとき「さあ何を描こうか」とはじめて作家がこれから進む方向は本来多岐にわたるはずです。まず、何にドットを貼り込むのか、そして、どのように貼り、どう見えるようにするのか。ここで、小野がとった方法は「見つけてきた」蝉の抜け殻に貼るということでした。何を「見つけてくるのか」ということは重要であり、その後の頭蓋骨などを見ると、きちんとしたテーマが見えてきます。生命の痕跡、しかも空ろなものを選び、そこに自分の作業の痕跡であるドットの柱を組み合わせる作品からは様々な解釈ができるでしょう。また、2009年のアートフロントでの個展でも1点のみ出品していましたが、ドットの柱を新たな平面に並べなおし張り込むことで作品をつくることも本格的になってきました。

今回の展覧会は、こうした新たな地平を探る小野の「削柱移植」シリーズの新作をご紹介します。

※全文提供: アートフロントギャラリー


会期: 2011年10月7日(金)-2011年10月23日(日)
会場: アートフロントギャラリー
レセプション: 2011年10月7日(金)18:00~20:00

最終更新 2011年 10月 07日
 

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