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カミン・ラーチャイプラサート:Beyond... (sculpture)
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 3月 24日

”Beyond... (sculpture)”より 2007-2009年、ブロンズ像24体のシリーズ、 各Ed.7+AP1, edition: Art-U room copyright(c) Kamin Lertchaiprasert / Courtesy of Art-U room

タイ北部の都市チェンマイを拠点に活動するカミン・ラーチャイプラサートは、アートとは「人生」と「自然」をより良く理解するための過程と捉え、日常とアートの融合を目指すプロセス重視型の制作活動を展開しています。彼の作品ではしばしば、日々の出来事や人々と交わした会話といった日常の実体験が題材となり、これらの経験は彼が日々行なう瞑想を通して客観的に捉え直された上で、日記風に記録されたドローイングや彫刻といった形で作品化されていきます。彼の作品の多くには座禅姿の人物像が登場しますが、これらは仏陀の姿を現すものではなく、彼自身あるいは彼を取り巻く人々の日常のポートレートと見なすことができます。

今回展示される24体のブロンズ像連作は、昨年バンコクで開かれた同名の個展の続編となるもので、「Beyond...」というタイトルには、視覚や聴覚など人間の感覚を超えたところで働く自然の摂理が暗に示されています。先のバンコクの個展では、軸装された紙面の表裏に、それぞれ記号風のモチーフと座禅を組む人物像が描かれ、来場者には表側の謎めいた記号だけが視界に供されているというものでしたが、今回の彫刻作品では、逆に、座像の底面の見えない部分に先の記号が隠された形になっています。これらのブロンズ像は、地元チェンマイの職人の手により、民間で古くから伝承されてきた鋳造法によって製作されました。故意に粗雑ともいえる素朴なフォークアート風の仕上げとされているのは、カミンにとってアートが、単に卓越した技法や装飾的な美を追求するものではなく、我々がいかに虚飾を排してより本質的な「生」を見出す事ができるかという問い掛けであることを示しています。

独自の方法論とその実践によりタイの現代アートシーンを力強く牽引するカミン・ラーチャイプラサート。当ギャラリーでの4年振り2回目となる本展を是非ご高覧下さい。

カミン・ラーチャイプラサート プロフィール
1964年タイ王国ロッブリー生まれ。1987年シラパコーン大学版画科を卒業後渡米。1992年タイに帰国後仏教哲学や瞑想法等に対する関心を深め、一日一点の作品を一年から数年の期間に亘って日々制作し一つのシリーズとして完結させる独自の創作スタイルを採るようになる。これまでタイ内外にて17回の個展を行なう他、シドニー・ビエンナーレ(1993年)、ヴェニス・ビエンナーレ(2003年)、釜山ビエンナーレ(2008年)等の国際展に参加。また、個人的な創作活動と平行して、チェンマイにてリクリット・ティラヴァニャらと実験的コミュニティ「The Land」を運営したり、昨年開催された「金沢アートプラットホーム2008」では地元住民との共同プロジェクトを行なうなど、他者や社会との関わりに根ざした活動にも精力的に取り組んでいる。

※全文提供: Art-U room

最終更新 2009年 4月 11日
 

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