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SICF12 グランプリアーティスト展 福士朋子:出口/入口」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 9月 29日

《space / surface》2011年 | 450×600mm | ホワイトボード、油性マジック、マグネット他 | Copyright© Tomoko Fukushi | 画像提供:スパイラル

ロッカーなどオフィス用品が並ぶ無機質な空間、
昨日と今日が区別できないような出口のない日々。
つぶやきは世界を変えるのか。

SICF12のグランプリ受賞者、福士朋子の展覧会。

ありふれた素材と漫画の手法・構造を用い、
パーソナルな気づきを等身大に表現

福士朋子は、ホワイトボードやマグネット、ダーツや油性マジックなど、誰でも手に入るありふれた大量生産品と親しみのある漫画の手法を使い、自分の小さな思いつきや心の中のつぶやきを等身大で描きます。たとえば、機内食の肉料理と魚料理を選ぶときの戸惑いなど、ふとした時にぼんやりと頭の中で思い描く想像や独り言のようにささいなエピソードで、そこには、社会にインパクトを与えるような「大きな物語」はありません。

とるに足りない個の声を顕在化させる福士の試みは、私たち現代を生きる個人がどれほど声を上げてもなかなか思う通りに進まない時代の閉塞感やもどかしさを感じさせます。同時にTwitter の出現によって、パーソナルな声の集積が社会の大きなうねりを産み出しうる今日において、個人の「小さな声」が国をも転覆させかねない力を持ち始めた今という時代の流れとも共振します。

ショウケースをオフィス空間に見立て、インスタレーションを展開
本展では、複数のドアを持ち、出入りの流れが複雑なショウケースという空間を読み説き、出口/入口」をテーマにインスタレーションを展開。ショウケースをオフィスに見立て、ロッカーが並ぶ無機質な空間に新作を展示します。繰り返される昨日と今日が区別できないような日々。出口の見えない毎日の中で生まれては消えていくささやかな思いや、つぶやき。日の目を見ることのなかった「小さな声」が形を持った時、そこには、明日を変える大きな力が潜んでいるのかもしれません。

ショウケースでは「出口/入口」をテーマに展示を行う。スパイラルの玄関でもあるショウケースは、この空間自体にドアが複数あり、出入りの流れが複雑な場である。普段は意識しない「出る/入る」という動作や、出口が入口でもあることなど、その他特にその関係に疑問を持たないようなシンプルな反対語、対照語を元に制作した作品を展示する。フェンスの内/外で分けられた空間、機内の非常口、日本の伝統空間の内/外の境界についてなど、これまでの作品のテーマをさらに発展させて、マンガの「コマ割り」や、「内語」という声には出さずに考えている言葉などを用いて、すぐに忘れてしまうような一瞬の経験や意識、声にならない声を留めていきたいと思っています。
-福士 朋子

福士朋子(ふくし ともこ)
青森県生まれ。
2005 年 東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画修了
現在 女子美術大学准教授

[主な個展]
1998 年 INAX ギャラリー(東京)
2004 年 ギャラリーアートもりもと(東京)
2005 年 藍画廊(東京)、art& river bank(東京)
2007 年 ギャラリーアートもりもと(東京)

[主なグループ展]
1999 年 「VOCA 展 '99」 (東京)
2003 年 「DOMANI・明日展2003」(東京)

※全文提供: スパイラル


会期: 2011年10月28日(金)~2011年10月30日(日)
会場: スパイラル

最終更新 2011年 10月 28日
 

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