ニューヨークを拠点に活躍するミクスドメディア・アーティスト、後藤輝の個展では、新作のペインティングに色々な素材を用いたインスタレーションを展覧致します。オープニングでは参加型のパフォーマンスを行ないます。 後藤輝は、ドローイングやペインティングをダクトテープやファブリックを用いて展示することにより、建築空間を変換し遠近感を歪めるインスタレーションをしてきましたが、今展「You Are The Universe」では、キッチュなイメージや色のパターンを用いたペインティングをご紹介致します。視覚的慣習を覆すような後藤の新作シリーズは、例えば「origami is wonderful」では、身体のない二匹の子猫の頭部が、黄色を上部に据えたパステルブルーと紫、灰色が織り混ざった幾何学的なフォームを背景に描かれます。また「at first」では、黒を背景に上昇する巨大な葉っぱが、両脇に立体的な編目模様を携え描かれます。うち一つの編目模様は空間の中に漂い、もう一つは緑色のハートマークの中心に描かれます。画面下にはネオンのような赤色の線が波を打って画面左の青色部分から紫色へと拡張しています。グリーティングカードや、昔のウェブサイトのデザイン、又は80年代後期から90年代初期のアルバムジャケットとも似つかない後藤の感覚は、多様な文脈を誘い、安易な解釈を拒否します。 また、後藤は、草原に猫が佇む風景をデジタルプリントした壁紙で画廊正面の壁を覆います。画廊空間の床も土や草花で覆われ、丸太椅子やテーブルが設置されます。このインスタレーションはオープニングに行なわれる参加型パフォーマンスのセットで、後藤は自身の創った陶器で、有機食材を使った手作りのお菓子やお茶を振る舞い、来場者をもてなします。この21世紀ボヘミアン・ティーセレモニーは、市場の力と、社会的ヒエラルキーと、また個人の無関心さがライフスタイルに影響を与える現代の都市型コスモロジーを転覆することを目的としています。後藤は、高級食材であるオーガニックプロダクツでつくったおいしいお茶やお菓子を振る舞い共有することで、幸せの経済学を探求し、また参加者によって各々の生活に反映されることに希望を託します。
※全文提供：　Take Ninagawa