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「アート・スコープ 2009-2011」-インヴィジブル・メモリーズ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 28日

画像提供:原美術館

小泉明郎、佐伯洋江、エヴァ・ベレンデス、ヤン・シャレルマン。日本とドイツ・4 人のアーティストによる競演

日本とドイツの間で互いに現代美術のアーティストを派遣・招聘し、異文化での生活を体験しながら交流をはかる──それがダイムラー・ファウンデーション ジャパンの文化・芸術支援活動「アート・スコープ」です。原美術館は2003 年から「アート・スコープ」のパートナーをつとめており、交換プログラムの成果を踏まえた展覧会を開催してきました。日独交流150 周年記念イベントのひとつとして開催される本展は2009 年にドイツから招聘した2 名と2010 年に日本から派遣した2 名による展覧会です。

小泉明郎は演劇的手法を取り入れたヴィデオアートによって、人と人とのコミュニケーションあるいは人と社会の関係を観察し、時にユーモラスに、時に冷徹に視覚化します。佐伯洋江は大胆に余白を生かした画面に繊細で有機的なイメージを丹念に描き込み、静謐な中に緊張感の漂う独自の絵画空間を構築しています。エヴァ・ベレンデスは繊維素材から金属まで幅広く使用し、光や視線が微妙に透過する立体・インスタレーション作品で空間との対話を織り上げます。ヤン・シャレルマンは、主にスタイロフォームやエポキシ樹脂などの工業素材を使い、抽象的な形態とカラフルで硬質な塗膜による力強い表現を生み出します。

いずれのアーティストも、交換プログラム参加後に制作した最近作・新作を中心に発表いたします。

出品作品を一見しただけでは作家個々の滞在経験を直接感じ取れないかもしれません。しかし、異文化の地で数カ月を過ごした経験はそれぞれの記憶に残り、作品の背後に見えない記憶(インヴィジブル・メモリーズ)として存在するはずです。一方で鑑賞する側は、作家が差し出すイメージによって感覚や想像力を刺激され、自分の記憶の底に「インヴィジブル・メモリーズ」として沈殿する「なにか」を呼び起こされるかもしれません。作品を触媒として、明瞭であれ曖昧であれ、個人的であれ集団的であれ、さまざまな「インヴィジブル・メモリーズ」が交錯し、共有されるイメージが浮かび上がってくるのは「美術の力」と言えるものです。遠く1930 年代に私邸として建てられた原美術館の空間にもさまざまな見えない記憶が刻まれていますが、それもまた作品にとって魅力的な器となり、イメージを増幅する媒介になるに違いありません。

小泉明郎 Meiro Koizumi (1976 年群馬県生まれ/神奈川県在住)
演劇的手法を取り入れたヴィデオアートによって、人と人とのコミュニケーションあるいは人と社会の関係を観察し、時にユーモラスに、時に冷 徹に視覚化するアーティストです。2010 年「あいちトリエンナーレ2010」に出品したほか、海外での発表も重ねています。

佐伯洋江 Hiroe Saeki (1978 年大阪府生まれ/東京都在住)
大胆に余白を生かした画面に繊細で有機的なイメージを丹念に描き込み、静謐な中に緊張感の漂う独自の絵画空間を構築しています。2006 年に「VOCA 奨励賞」を受賞したほか、国立新美術館の「アーティスト・ファイル2008 – 現代の作家たち」などに出品しています。

エヴァ・ベレンデス Eva Berendes (1974 年ボン生まれ/ベルリン在住)
繊維素材から金属まで幅広く使用した立体・インスタレーション作品で空間との対話を織り上げます。光や視線が微妙に透ける素材による優雅で繊細な表現が特徴的です。ドイツを中心にヨーロッパ、アメリカで多数の展覧会に出品しており、日本では本展が初の発表です。

ヤン・シャレルマン Jan Scharrelmann (1975 年ケルン生まれ/ケルン在住)
主にスタイロフォームやエポキシ樹脂などの工業素材で立体・インスタレーション作品を制作しています。シンプルで抽象的な形態にカラフルで硬質な塗膜があいまって、展示空間の中で力強く主張する表現を生み出します。発表歴は豊富ですが、日本では本展が初の発表です。

全文提供: 原美術館


会期: 2011年9月10日(土)-2011年12月11日(日)
会場: 原美術館

最終更新 2011年 9月 10日
 

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