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和田みつひと:残像の庭
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 26日

画像提供:MA2 Gallery

展覧会の会場となるMA2 Gallery は、恵比寿の高台にあり、自然光が差し込む大きなガラス窓が印象的な場所です。初めて、ギャラリーを訪れた際、大きな窓と白い壁に囲まれた空間が、都市の喧噪の中にありながら、静かな時間が流れる日常とは全く別の空間、まるで日本の庭の様に感じました。日本の庭は、生活に密着した身近な自然空間であり、都市の狭間に合って人々と自然(環境)との交歓の場としてあります。場所の特性を生かし、光と色のインスタレーションによって、「残像の庭」と題した展覧会を開催いたします。

黄色い光に包まれた空間をつくりだす1階では、カメラオブスキュラ(ピンフォールカメラ)に設えた箱を茶室に見立て設置します。アルミ板で仕上げられた箱の表面は、周囲の光景を黄色に染めて映しだします。箱の中に入ると、真っ暗な空間に黄色い光の残像である菫色が見えてきます。次第に暗さに目が慣れてくると、箱に開けた小さな穴(ピンフォール)から差し込む光によって、窓の外に見える都市の光景が上下逆転し映しだされていることに気づきます。

ピンク色に満ちた空間をつくりだす2階では、補色残像効果という人の眼の生理現象によって、ピンク色に慣れてると補色のグリーンの色が強く見えてきます。ピンク色の光が届かない白い壁もグリーンに見えてくるのです。さらに、部屋の暗部には、室内の様子をビデオカメラでとらえ、ネガフィルムのように補色のグリーンに反転させ、液晶プロジェクタで映し出します。ピンク色を見続けた後、グリーンに反転して投影された映像を見ると、より鮮やかなグリーンに見えるのです。

日没と共に、今回の展示のもうひとつの姿が見えてきます。黄色とピンク色の光が夜の闇に浮かびます。土曜日・日曜日・ 祝日の日没後は、青い光が、あたかも無信号のブルーバックのように夜空に浮かびます。日没後、とくに週末と祝日の夜は、建物全体を使い、夜の都市へと光と色が介入するのです。

「残像の庭」と題した作品は、昼と夜、建物の内と外、作品となる場所と作品を見る人との関係の中に紡ぎだされる作品です。普段、あまり意識をすることのない日常の風景や慌ただしい生活の中で見過ごしている自分自身と向き合い、生活の中にある「美」を問う契機をつくり出します。日本の庭と通じる、いわば日常生活の狭間に垣間見る非日常性に立脚した美意識を喚起したいのです。

和田みつひと
1965 東京都に生まれる
1991 多摩美術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
2004-05 文化庁新進芸術家海外留学制度にてドイツ・ベルリンに派遣

個展
2001 「〈光のかたち〉公園灯プロジェクト」 アートリンク上野- 谷中2001、上野恩賜公園( 東京)
2003 「[re-place]」 藍画廊( 東京)
2004 「green/green」 慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎ギャラリー( 神奈川)
2005 「replace it for the life」 or'est( ベルリン)
2007 「ピンク× グリーン」プロジェクト 上野の森美術館ギャラリー( 東京)
2009 「“on Blue”」 LOOP HOLE( 東京)
2009 「Behind Blue Light Yokohama」 BankART Studio NYK、 本町実験ギャラリー、BankART かもめ荘、BankART 桜荘( 神奈川)


グループ展
2000 「空間体験:[ 国立国際美術館] への6 人のオマージュ」 国立国際美術館( 大阪)
2000 「プラスチックの時代|美術とデザイン」 埼玉県立近代美術館( 埼玉)
2004 「カフェ・イン・水戸2004」 水戸芸術館現代美術センター( 茨城)
2005  「BankART Life 24 時間のホスピタリティー ~展覧会場で泊まれるか?~」BankART Studio NYK( 神奈川)
2006 「DZUGUUUN」 Galeria H.arta( ティミショアラ)
2009  「桐山の家」 BankART 妻有( 新潟) *[ 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009]
2010 「知覚の扉」 豊田市美術館( 愛知)
2010 「知覚の扉Ⅱ」 喜楽亭( 愛知)

全文提供: MA2 Gallery


会期: 2011年9月17日(土)-2011年9月25日(日)※会期中無休
会場: MA2 Gallery

最終更新 2011年 9月 17日
 

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