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鷹取雅一:SPORTS FOR YOUTH
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 25日

Copyright© Masakazu Takatori | 画像提供:児玉画廊

これまでの展覧会では、ドローイングやコラージュ、ペインティング、スナップショットを集めたアルバム、ドローイングブック、粘土やシリコン樹脂で細工した立体作品、更に、市販のおもちゃや何かの端材、壁紙の切れ端なまで、ありとあらゆる雑多な物を膨大に並べ立て、空間を極度に圧縮したようなインスタレーションを発表してきました。

そうした、伝統やアカデミックなものに対するアイロニーとも取れる鷹取のスタイルは、例えば、物量もさることながら遮蔽物や障害を設けたりして敢えて見難い展示方法をとることや、通常絵画には用いられないであろう素材(ガラス用絵具やT-シャツ用の立体ペイント、ラッカースプレー等)を敢えて全面に押し出した描画方法、あるいは、絵画の主題としては露骨過ぎるようなセクシーなモチーフ、逆に、極端にディフォルメされた描写など、随所に様々な形で見受けられます。

今回、「SPORTS FOR YOUTH」とした展覧会名を、「単に、たまたま見かけて気になったフレーズ」と臆面もなく言い切るあたりにも鷹取らしさを垣間見ることができます。一方、展示の内容においてはとりわけ大きな変化が見られ、以前のような目を眩ませる程の物体の洪水は影を潜め、代わりに視線をあちらこちらに誘導するような、散発的で三次元的な作品配置が壁面にリズムを生んでいます。

加えて、インスタレーションの要となっているのは、鷹取自身は「動物の為の遊具のような」と表現しましたが、単純な直方体を成す3基の木製フレームで、それに作品やオブジェをぶら下げたり、乗せたり、絡めたりしています。

これまでのインスタレーションおいても鷹取は展示台等を多用していますが、それは、空間に起伏を与えるのと同時に視線を遮る為の障害としての効果を狙ったものです。それに対して、今回の「動物の為の遊具のような」展示台は、それぞれの作品が意地が悪いまでに見難い位置にあるのは変わりなくとも、空間を見通す事が出来るという点において、全く別の意図を感じさせます。眼前の作品を見つつも、その向こうには別の作品が存在感を放っていて視線がやはり止め処なく誘導されてしまうのは、まず物量が減り、展示密度が劇的に少なくなって空間に隙間が生じたことに寄る所が大きく、そして、それを鷹取が意識的に利用して空間を構成しているからであるということに気付かされます。成る程、檻の中の遊具で遊ばされているようだと、先の鷹取の言葉を思い出して苦い笑いを噛み潰す、そんな観客の様子を鷹取も期待しているのかもしれません。

新たな試みとして、ペーパードローイングに大量のガラス絵具を使用した作品では、紙に浸透した硝子絵具が紙を変質させ、布ともゴムとも付かぬ不思議な質感が目を引きます。ペインティングではガラス絵具の上に油絵具を使用し、それが解け合うように均質化して、ガラスの奥に描かれたような艶やかな表面が、人物や風景のモチーフに非現実的な表情を加味しています。新たな変化を遂げつつも泰然自若、鷹取の新作インスタレーションをぜひお楽しみ下さい。

全文提供: 児玉画廊


会期: 2011年8月27日(土)-2011年10月1日(土)
会場: 児玉画廊 | 東京
オープニング:  2011年9月3日(土)18:00~

最終更新 2011年 8月 27日
 

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