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玉野大介:奇跡のカフカ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 2月 17日

《カフカが町にやってきた》2008年、73x116.5cm、Oil on canvas copyright(c) Daisuke TAMANO / Courtesy of unseal contemporary

玉野大介は、これまで決して華やかな活動歴はないのですが、知る人ぞ知る作家であり、一部に熱烈なファンを持つ稀有な作家です。稀有というのはその資質とスタイルにおいて際立ってユニークであることと、かつそれを決して変えないという頑固さにおいてです。玉野作品を前にすると、作品をどう評価すればいいかなどとはあまり考えません。ただただ、そのユニークさ、不思議さ、不気味さ、懐かしさが渾然一体となった作品世界に見入るだけです。一度目にすれば、たぶん大多数の人は忘れられないでしょう。作家の個人的な夢、想像の世界が描かれていることは間違いなく、その限りであまりに個人的すぎるという見方もあるかも知れません。しかし作品のイメージが私たちの記憶に沈んでいきながら消え去ることがないことを考えると、玉野の作品は確実に個人的体験を超える普遍的なものに届いているのです。たぶんそれは作家が一貫して「少年の無垢」を描いているところから来ているように思えます。すでに私たちが遠い昔に失ったものを作家は今も内部に保持していて、私たちは彼の作品から、自分の内部に痕跡として散逸している「無垢」のかけらが動くのを感じ取るのでしょう。私たちでは初個展となる本展は、作家が長く読み込み親しんできたカフカを玉野の視点で描く試みとなります。カフカの世界と作家の世界が重ねられるわけですが、なにせそれぞれの世界が際立って独自のものであり、はたしてどんな世界が現出するか予断を許しません。稀有な作家、玉野大介による「カフカづくし」の本展をぜひぜひご高覧ください。

玉野大介経歴
1961年 大阪生まれ
1985年 早稲田大学法学部中退、画家を志す
2002年 ターナーアクリルアワード大賞受賞、リキテックスビエンナーレ、ヒロ杉山賞受賞
2003年 個展 パルスギャラリー/神楽坂
2007年 個展 maru gallery/港区
2008年 市場大介企画「 ジャパンパラノイア展」 ルモントアンレア/Paris

※全文提供: unseal contemporary

最終更新 2009年 3月 06日
 

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