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井手尾摂子:時の望郷
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 2月 17日

《雪の華》2008年、パネル、石膏、テンペラ顔料、プラチナ箔 117x101cm copy right(c) Setsuko IDEO / Courtesy of Galerie Suiran

井手尾の作品は「テンペラ」という顔料を卵などで溶き作る、ヨーロッパ中世時代に絵を描く画材として使用された水溶性の絵具と金箔やプラチナ箔などで、テンペラに適した下地を施したパネルに、時にはレリーフ状の凹凸もつけながら描かれる。その様式は、ヨーロッパ中世の戯曲的な叙情性と日本的な装飾性を併せ持ち、幻想的でナルシストな一面がありながら、どこか冷静な客観性を併せ持つ独自の世界を創り出している。 例えば、誰もが美しいと感じる花々や木々と対極的に「はっ」と思わせる、蛇やトカゲ、コウモリなども描かれたり、鳳凰のような創造上の鳥が描かれていたりもする。「絵画」という人間が意図的に創り出す幻想ともいえる非現実性の中に、自然界にある現実を作者はあからさまに私たち鑑賞者に突きつけてくる。 単なる視覚的美意識や装飾性にとどまることなく、作家の投げかけてくる静かなる問いかけに私たちは何を見出すことが出来るのだろうか。  今回の個展に彼女は以下のような文章を寄せた。

南国に咲く花々や生き物達には 奔放で豊饒な色と形が満ちている また一方、純白の雪のひとひらにも 実は精緻な形が無限に広がっている 古来、人の生活の傍らにいて 人と関わりながら生きてきた野性の生き物達は 自然そのものの体現でありながら 大自然のなかで生きていく人間そのものの本来の姿と たどってきた歴史を思い起こされるようで、特別な共感を持つ この世の不思議に満ちた色と形と生き物達を 追っていきたいと思う

プロフィール
1961 長崎県に生まれる/’83 安宅賞受賞/’84 女子美術大学洋画科卒業/’86 多摩美術大学大学院美術学部修了/’00 第35回昭和会展優秀賞受賞
[個展] スポーツニッポンギャラリー(東京)/ギャラリーアートもりもと(京橋・銀座)/福岡日動画廊(福岡)/リウボウホール(沖縄)/画廊翠巒(前橋)/千葉そごう(千葉)
[グループ展・公募展] ‘99 「絵と陶で遊ぶー三人展」柴田悦子画廊・銀座/’00 「時分の花」ぎゃらりぃ朋・銀座/「三人展-交叉する行方」ギャラリーしらみず美術・銀座/’01 「時のかたち」横浜市民文化センター(以後毎年)/「絵と版で遊ぶー三人展」柴田悦子画廊・銀座/’02 「第36回昭和会展賛助出品」日動画廊・銀座/「第2回新たなる視覚展」福岡日動画廊 / 「現在洋画の潮流」名古屋三越、日本橋三越/’04 「前田寛治大賞展」日動画廊・倉吉博物館/’05 「八章会」横浜高島屋/’06 「写実画壇展」(以後毎年)/‘08 「女性の輝き展」日動画廊・銀座
[装丁他] ’96 木崎さとこ著「光る沼」(新潮社)表紙装画 /「MUSE新作美術展」所沢市民文化センターMUSE /’99 オペラ・リリカ八王子「蝶々夫人」ポスター、チラシ原画他
※全文提供: 画廊翠巒
最終更新 2009年 2月 21日
 

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