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上出長右衛門窯 上出惠悟:幽谷
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 11日

髑髏 お菓子壷 花詰 | 上出長右衛門窯+丸若屋/参考画像 | 金沢21世紀美術館所蔵 | photo:忽那光一郎 | 画像提供:Yoshimi Arts

日本の伝統工芸は様々な問題を抱えています。生活スタイルの変容、工業製品の台頭などによる需要の低迷に伴った職人の減少は、道具や原料を作る業者にまで及び、今や伝統工芸は産業として衰退の一路を辿っていると言わざるを得ません。石川の伝統工芸である九谷焼においても、例外ではありません。

上出長右衛門窯の六代目として生まれた20代の上出惠悟は、九谷焼の中でも数少ない磁器の成形から絵付まで一貫して生産する窯元で、上出長右衛門窯を継承し守って行く為に、企業やデザイナーとのコラボレーションや、ワークショップなど九谷焼を広めるための様々な取組や作品の発表を行ってきました。

上出惠悟が試みている活動は、今までの伝統工芸が行ってきたものとは明らかに違うと考えています。今までの伝統工芸の現代性とは、無理やり現代に迎合するが故に、新しい作品を生み出すに至らず、伝統と現代とを同居させただけの歪な作品になってしまっていたように思えてなりません。 日本には今まで戦後一貫した社会の規範や価値基準が存在し、またここ20年はそれらが存在しなくなったと信じたくない社会が蔓延しています。しかし、戦後から続いた価値基準は20代の人々には届いておらず、彼らはその価値に左右されない視点を持っているようです。 上出惠悟の視点は、今まで私たちが見ている「物」としての九谷焼とは同一ですが、見えている風景や未来が違います。1世紀以上継承してきた歴史を一旦据え置き、九谷焼の歴史を最大限に解釈し、整合性を持たせながら、新しい価値を創造することを試みています。

上出長右衛門窯が新しく生み出した作品に、「髑髏 お菓子壷」の花詰文様がありますが、この作品では、過去から受け継いでいる文様を生として解釈し死を表す髑髏に描く事で、単なる文様でしかなかった花詰が髑髏とのコントラストによって異常な生の欲求へと変貌しているのです。

今展では、上出惠悟は九谷焼の歴史と厳しい現状、自身が現在置かれている立場から再生という考えに至り、九谷と自身の源流を考えるという意味で展覧会名を「幽谷」と題しました。髑髏花詰文様から続く物語をさらに掘り下げながら、上出長右衛門窯として器物の可能性を再考する新作を展示発表致します。

九谷焼窯元 上出長右衛門窯 Kamide Choemon-gama
明治十二年 石川県能美市に九谷焼問屋として創業
明治三十年 九谷焼製造を開始する
昭和十六年 本窯を導入、この頃より「上出長右衛門窯」と号す
昭和二十七年 窯業協会紙に工芸博士小沢卯三郎先生と共同研究の「九谷焼杯土の基礎研究」と題し論文を発表する
昭和四十四年 明治神宮御依頼による「花瓶」を献納の栄を賜る
昭和四十六年 朝鮮陶磁の研究に訪朝する
昭和四十七年 創造美術会陶芸部に推挙される
昭和四十八年 全国現代茶陶展に委嘱出品する
昭和四十九年 東大名誉教授故三上次男先生を講師にヨーロッパ陶磁研修に八カ国を廻る
昭和五十一年 全国煎茶道大会に委嘱出品する
昭和五十五年 中国景徳鎮に於いて中国陶器の研究をする
昭和五十八年 昭和天皇御来県の折、御使用の御器制作の栄を賜る
平成二年 石川県九谷陶磁器商工業協同組合連合会理事長に推挙される
平成五年 伝統的工芸品産業の振興への功績を讃えられ通商産業大臣表彰を受ける
平成八年 四代目、藍綬褒章を受く
平成十年 四代目、永年の功績により寺井町より表彰される
平成十二年 沖縄サミットの折、首脳晩餐会の器に使用される
平成十五年 四代目、勲五等雙光旭日章を受く

上出惠悟 Keigo Kamide
1981年 石川県生まれ
2006年 東京藝術大学美術学部絵画科絵画専攻卒業

上出長右衛門窯/上出惠悟(製品企画デザイン/ディレクション)
個展
2007年
10月 「Comme des Choemon」(a.k.a./金沢)
2008年
4月 「長右衛門窯・九谷焼ショップ」(アルトラ/金沢)
10月 「Smiling Living」(新宿伊勢丹/東京)
2009年
6月 「ちゅう右衛門・大作陶展」(茶房一笑/金沢)
10月 「NEXT SAKE, NEXT VALLEY」(福光屋銀座店/東京)
2010年
1月 「KUTANI CONNEXION」(スパイラルガーデン/東京)
2月 「九谷焼窯元 上出長右衛門窯 作陶展」「ねずみの陶工 ちゅう右衛門翁大作陶展」(H2O/京都)
7月 かなざわ納涼会 (主計町尾崎邸/金沢)
10月 「笛吹展」(アルトラ/金沢)
12月 「春のさきがけ」(CLASKA/東京)

グループ展)
2008年)
2月 「BONE TO LOVE」(ギャラリー・ル・デコ/東京))
10月 ウルトラ001 (スパイラルガーデン/東京))
2010年)
3月 「輪島キリモト&上出長右衛門窯」(日本橋三越/東京))
5月 「第1回金沢・世界工芸トリエンナーレ」(金沢21世紀美術館/金沢))
8月 「BASARA展」(スパイラルガーデン/東京))
デザインタイド2010 「上出長右衛門窯×ハイメアジョン produced by 丸若屋」(ミッドタウン/東京))
2011年)
1月 「佐藤未希+上出長右衛門窯 展」(Yoshimi Arts/大阪))
4月 ミラノサローネ2011 「上出長右衛門窯×ハイメアジョン produced by 丸若屋」(ロッサーナ・オルランディ/イタリア))
5月 「ハイメ・アジョンの世界展」(渋谷西武/東京))
7月 ART OSAKA 2011-Yoshimi Arts 「Insight “Repetition/反復”」(ホテルグランヴィア大阪/大阪)

プロジェクト/イベント)
2007年)
5月 「PUMA with MARUWAKA KUTANI」(ミッドタウン/東京他全国4カ所))
8月 「茂木健一郎が金沢のアーティストと大いに語る」(social/金沢))
2009年)
7月 「KUTANI SEAL WORKSHOP」以降各地で開催)
「ART PICNIC」(表参道ヒルズ/東京)

パブリックコレクション:金沢21世紀美術館、能美市

全文提供: Yoshimi Arts


会期: 2011年9月26日(月)-2011年10月16日(日)
会場: Yoshimi Arts
レセプション: 2011年10月1日(土)18:00~

最終更新 2011年 9月 26日
 

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