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町田久美 新作銅版画展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 10日

《宵》(部分)エッチング、リトグラフ 画像提供:キドプレス Copyright © Kumi Machida and KIDO Press, Inc. 2011

1970年高崎市生まれ。1994年多摩美術大学絵画科日本画専攻を卒業。2005年2007年にはVOCAへ出展、また2006年には東京都現代美術館にて「MOT アニュアル No Border-『日本画』から/『日本画』へ」が開催され、日本人アーティストの新世代グループを代表する一人として広く知られるようになりました。活躍は国内のみならず海外でも広くみられ、これまでにアメリカやヨーロッパの各所で展覧会を行っています。2008年には文化庁芸術家在外研修員としてデンマークへ滞在、制作を行いました。

今年NYのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで行われた、「バイバイキティ!!!:天国と地獄の狭間で」では、出展作家16名の中でも、まったく誰にも似ていない独自の世界観で異彩を放ち、多くの人を驚かせました。オタク、マンガ、カワイイ文化以降の日本の現代アートに目を向けたこの展示では、町田の洗練された美的感性が紹介され、これまでのブランド化された奇抜な日本現代アートのイメージを払拭するものとなりました。

なだらかな黒い線を目でたどることによって、見えてくる町田の絵の世界。一見すると一息に筆で引かれたような線ですが、実は途方もない時間をかけて描画用の細筆で幾度もかさねた線の束が一本の線になっています。

画面に描かれる人物は、みな子供のようで、また人形のようでもあり、どこか中性的です。巨視的なまでにおおらかな表面と、顕微鏡で見たような繊細に描かれた部分の描写との対比が魅力的で、また、融合する形や肉体の変形、不思議な質感など、みる者は概念を打ち壊す意外性に次々と驚かされます。

そんな町田が今回、筆をニードルに持ち替えて、銅版画の制作にあたっています。 町田の試みている自身初めての銅版画は、詳細な技法、材料に至るまで、まさにレンブラントの用いた古典エッチング(腐食銅版画)技法そのものです。固形グランドを直接ダバー(グランドを塗布する為の伝統的な道具)で銅版に塗り込んで行く、この古典技法は、町田の繊細な針(ニードル)の動きを余すことなく銅版に刻みつけます。そして腐食液につけ込む腐食時間は、いつもわずかに1分たらず。

常識では考えられない超短い腐食時間は、繊細を極めた描線へほんのわずか腐食による凹を作ります。そして、そこには、最低限のインクしか版は、受け付けません。描線というより、痕跡に近いようなわずかな線の集積を町田は愛おしむかの様に造形へと昇華させて行きます。腐食の度に試し刷りをとってそこまでの制作を確かめ、再びグランドの塗られた銅版に、ゆっくりと姿を現すイメージをまた描き続ける・・・という作業を町田は黙々と続けています。

町田の果てしなさを感じさせるまでの執拗な造形への描画作業は、現在、第9ステート(9回目の製版作業)まで進んでおりまだ、その手からニードルを放す事はないようです。 時間と情熱とその持てる画力を贅沢に注ぎ込んだ結晶ともいうべき町田久美の新作版画作品を皆様のお目にかけられる事が、いまから待ち遠しくて仕方がありません。

町田 久美/Kumi Machida
1970 群馬県高崎市に生まれる
1994 多摩美術大学絵画科日本画専攻卒業
1999 前橋アートライブコンペ'99 グランプリ受賞
2006 アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ARKO」(大原美術館、岡山)で滞在制作
2007 第四回上毛芸術文化賞受賞、The Sovereign Asian Art Prize 2007を受賞
2008 文化庁芸術家在外研修員としてデンマークで滞在制作

個展
2011 「町田久美新作銅版画展」(仮称)キドプレス、東京
“VISIONS” Ha gamle prestegard、ノルウェー
2010-11 "Stories from a Cold Country" 西村画廊、東京
2008  “Kumi MACHIDA die kunst japans/ past – present – future/ araki meets
hokusai & kumi machida” kestnergesellschaft、ハノーバー
"Kumi Machida - ことばを超えて語る線" 高崎市タワー美術館
"Snow Day" 西村画廊、東京
2006 「町田久美新作展」西村画廊、東京
2005 「町田久美<à Sade-サドに>」西村画廊、東京
2003 ギャラリーブロッケン、東京
2002 Gallery Station、フランクフルト
ギャラリー北村、東京('03)
新生堂、東京
2001 シブヤ西武美術画廊、東京
2000 "Amsterdam galleries celebrate the Japanese connection", Gallery ac Witteveen、アムステルダム

グループ展
2011 「BYE BYE KITTY!!! BETWEEN HEAVEN AND HELL IN CONTEMPORARY JAPANESE ART」ジャパン・ソサエティー・ギャラリー、ニューヨーク、「I氏コレクション展」高崎市美術館
2010 「I氏コレクション展」阿久津画廊、群馬
「絵画の庭」国立国際美術館、大阪
「大原美術館創立80周年記念特別展『大原BEST』」大原美術館、岡山
「ARTISTIC CHRISTMAS vol. IV」高島屋新宿店10階美術画廊
「SHINJUKUサザンライツ 2010-2011 Artistic "LOVE" Christmas ~10の言葉が紡 ぐストーリー~」タカシマヤタイムズスクエア&新宿サザンテラス
「DOMANI・明日展 2010」国立新美術館
2009 「Drawings」西村画廊」
「SEVEN - 西村画廊35周年記念展」西村画廊
2008 「MANGA! Japanske billeder」ルイジアナ現代美術館、デンマーク
「形・意・質・韻」タイペイ・ファイン・アーツ・ミュージアム
「ネオテニー・ジャパン-高橋コレクション-」霧島アートの森、鹿児島、札幌芸術の森美術館、北海道、上野の森美術館、新潟県立美術館、秋田県立近代美術館、米子市美術館、鳥取、愛媛県美術館(-'10巡回)
2007 「ARKO2006作品公開 北城貴子・町田久美」大原美術館、岡山
「選抜奨励展2007」損保ジャパン東郷青児記念美術館
「伝統からの創造 21世紀展」東京美術倶楽部他巡回
「セプテンバーショー2007」西村画廊('10)
2006 「MOT アニュアル No Border-「日本画」から「日本画」へ」東京都現代美術館
「第三回東山魁夷記念 日経日本画大賞展」ニューオータニ美術館、東京
「日本画ってなあに?-見て・知って・ナットク」高崎市タワー美術館、群馬(-'07)
2005 「VOCA展 2005」上野の森美術館('07)
「Childhood Revisited」M.Y. Art Prospects、ニューヨーク
「サマーショー2005」西村画廊('06,'10)
「アートフェア東京2005」東京国際フォーラム('07)
2004 「日本画二人展 町田久美・中村ケンゴ」西村画廊 など

全文提供: キドプレス


会期: 2011年9月10日(土)-2011年10月22日(土)
会場: キドプレス
オープニングレセプション: 2011年9月10日(土)18:00 - 20:00

最終更新 2011年 9月 10日
 

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