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伊藤遠平:回帰現象
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 7月 29日

【左】「銀色に光る森の人の呼吸するイメージ」2010-2011、キャンバスに油彩、145.5×72.8cm 【右】「森の人」 2011、セラミック、H20xW11.5×D15cm | 画像提供:ユカリアート・コンテンポラリー | Copyright© Enpei ITO

伊藤は茨城県笠間市の豊かな自然に囲まれて生まれ育ち、現在も制作拠点としています。これまで一度見たら忘れること が出来ないような独特の存在感を放つ人物や動物など、具象的な形態を油彩画や立体作品として発表してきました。

今展では新たに「森」をテーマに展開致します。昨年の春、作家が日課としている愛犬との山中での散歩をしている際、春風に揺れる山々の揺らぎは深く大きな命の鼓動 として伊藤の心にとても強い印象を残しました。「目に見える物だけを追い求めるのでなく、様々な生命感を内包しなが ら、まるで画面がひとつの生き物のように機能し、動き始める事。それが今後の自己の表現にとって重要な要素と感じて おり、現在の目標でもあります。」と言う作家は「VOCA展2011」(※)において自身にとって初めての試みであ る具体的なモチーフを描かない新しいスタイルでの大作を発表するという大きな挑戦をしました。

voca展以来更なる進化を遂げている伊藤の最新作を発表する今展のタイトルは「回帰現象」。「森に内在する無限の 生命感」をテーマに油彩画・立体(セラミック)作品など10点ほどを発表予定です。

※全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などにより推薦された40歳以下の未知の優れた才能を紹介する平面作 品の展覧会。

ひとつひとつの小さなエネルギーがそれぞれの関係性を保ちながら、重なり合い、常に休むことなく連鎖し、やがて大き な生命体として形成されていく森という存在は、すべてを包み込む母のようでもあり、昔から人々が抱いてきたような恐 怖や信仰の対象など普遍的なものの象徴として捉えられて来ました。そしてその構造はまるで人間社会をも連想させ、現 代を生きる我々人間の本来あるべき姿を考えさせてくれるようにも思えます。

私の絵画作品は薄く溶いた油絵具を何層にも重ねる事で、次第に形が表れて来ます。日々森と対話し、そこで感じたイ メージをじっくりと画面の中に見つけて行くのです。目に見える物だけを追い求めるのでなく、様々な生命感を内包しな がら、作品がまるでひとつの生き物のように機能し、動き始める事。そのことをテーマに制作しています。

セラミックによる立体作品は森の中で拾い集めた枯れ葉や枯れ枝などを、水で液体状にした粘土(泥漿/でい しょう)で混ぜ合わせ、自然物の持つ有機的なフォルムと泥漿の流動性を生かす事で新たな表情を見せ始めます。こ の制作方法は絵画同様、偶然性と自身のテーマのせめぎ合いの中から生命感を抽出させるものであり、表れた形は見 る視点によって様々なイメージを連想させます。土に覆われた自然物は高温の窯に焼かれる事で燃えて無くなり、そ の部分が空洞となることで、作品内部には表面からは想像もつかない空間が生まれます。一度、生を終えた自然物は 土とひとつになりながら新たに再生を果たし、作品内部からも強い生命感を放つのです。

絵画・立体作品が同じ空間に展示される事でお互いが響き合い、私の持つ生命観がより表現できると考えています。 沢山の方が自由に様々なイメージを膨らませて頂ければ幸いです。

全文提供: ユカリアート・コンテンポラリー


会期: 2011年9月3日(土)-2011年9月23日(金・祝)
会場: ユカリアート・コンテンポラリー

最終更新 2011年 9月 03日
 

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