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Subjective Objects
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 7月 28日

原真一 《Venus – grave》| 2009年 | 大理石 | H67×W28×D42cm | 画像提供:山本現代 | Copyright© Shinichi Hara

今回の展覧会では、所属作家+他による、様々な形式で制作された立体作品を集めてご紹介いたします。2月に開催された平面作品を集めた「VISIONS/RECOLLECTIONS」と対になる展覧会です。

日本に「彫刻」という概念が入ってきたのは明治の近代化以降で、それ以前の仏像、神像や生人形な どの信仰の対象や所謂見せ物などから脱し、新しい自己表現としての有り様を模索し始めました。 日本の近代彫刻は特にロダンの影響を強く長く受けつつ、近年ではミニマルアート、もの派などを経て、サブカルチャーの援用によるフィギュア(人体)が、むしろ前近代と繋がるかたちで再び登場し、日本独自の進化を続けています。彫刻や立体作品は、従来のようなムーブメントやスタイル、~派などを構成するものではなくなり、そのあり方も多様化し、すでに「平面」や「立体」という概念そのものがプラクティカルな言葉であって、現代美術を語るための意味を持たなくなりました。

しかし便宜上の言葉としてだけでなく、概念としてもその存在自体も瀕死の状態で生き残っている所謂「彫刻」を援用したいくつかの現代の立体作品は、逆転して突然変異的に、新たな可能性を秘めているのかもしれません。例えば森靖や西尾康之、青木克世などの、「現代アート」という最先端のイメージの彼岸にある、むしろ土着的で根源的、かつ彼らの過剰な技術と思考に、歴史への異常な飛躍力が備わっているようにも思えます。

そこであえて素材や形式を主軸とし、今一度日本という独特な場所̶̶̶いわば文化的周縁で制作を続けている作家たちの作品を並列に見ることによって、浮かび上がり見えてくる動向を垣間みることができるのではないかと考えます。本展を体験することで「彫刻」の可能性を再考する機会になれば幸いです。

【出展作家
西尾康之(にしおやすゆき)
1967 年東京都生まれ。武蔵野美術大学彫刻科卒業。指で粘土を押して雌型を作る独自の手法「陰刻鋳造」を中心 に、油彩、墨絵など多彩な表現方法を用いて、死の恐怖やトラウマを克服するための作品を「エロス」と「タナト ス」という二大テーマに沿って制作している。2000 年「キリンアートアワード」奨励賞受賞、「岡本太郎現代美 術館」大賞に入選。2002 年『GEISAI#1』でグランプリを受賞。主な個展に「リヴァーシブル」(02 年、ナディ ッフ、東京)、「優麗」(06 年、山本現代、東京)、「ドラウン」(09 年、山本現代、東京)など。

田中圭介(たなかけいすけ)
1976 年千葉県生まれ。東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。同大学美術学部修士課程彫刻科修了。巨大な彫刻から、 建物を支える柱のような作品、またレリーフなど、古典的な木彫技術とその上にアクリルペイントで彩色を施す作 品を制作する。その彫刻は、自然の風景の一部を切り取ったような意匠だが、よくみれば植林された均一な山や森 であったり、小さな墓や観覧車、鳥居など、実は人工的な自然を、どこかユーモラスに彫り込んでいる。主な個展 に「田中圭介展」(01 年、Gallery 風、東京)、「青山」(08 年、山本現代、東京)。主なグループ展に「アト リエの末裔あるいは未来展」(06 年、旧平櫛田中邸、東京)、「物語の彫刻」(07 年、東京藝術大学 大学美術 館陳列館、東京)など。

森靖(もりおさむ)
1983 年愛知県生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、同大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。通俗的なアイ コンやシンボル、神話などを変容させた姿を、生乾きの木材と鑿のみを用いて驚異的な描写力で掘り起こす独自の 表現を続ける。主な個展に「好きにならずにいられない」(10 年、山本現代)、主なグループ展に「第4回アト リエの末裔あるいは未来」(08 年、旧平櫛田中邸、東京)、「第12 回岡本太郎現代芸術賞展」(09 年、川崎市 岡本太郎美術館、神奈川)、「彫刻-労働と不意打ち」(09 年、東京藝術大学 大学美術館陳列館、東京)、「TDW-ART ジャラパゴス展」(10 年、東京デザイナーズウィーク、東京)など。

原真一(はらしんいち)
1964 年茨城県生まれ。東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。同大学美術学部修士課程彫刻科修了。大理石を用い、 耳や舌など身体の柔らかい部分の連続や液体が流れて作り出したような透明感のある人体像を制作。 2000 年「キリンコンアートアワード」奨励賞受賞。2002 年「GEISAI-2」銀賞受賞。主な個展に「原真一個展」(88 年、ルミナ画廊、東京)、「-白い恐怖- [spellbound]」(05 年、ギャラリー手、東京)、「ホワイト・サマー」(06 年、ギャラリーせいほう、東京)など。主なグループ展に「彫刻の身体」(04 年、東京藝術大学 大学美術館 陳列 館、東京)、「GEISAI-7 メダリスト展」(05 年、東京ビッグサイト、東京)、「六本木クロッシング2007:未来へ の脈動」(07 年、森美術館、東京)、彫刻-労働と不意打ち(09 年、東京藝術大学 大学美術館陳列館、東京)

松宮硝子(まつみやしょうこ)
1981 年東京都生まれ、東京造形大学大学院修了。架空の生命体の「Duquheapuer」をガラスの中から掘り出し、 調査、研究する独自の手法で制作する。主な展覧会に「結晶学研究?分類編?」(06 年、BankART Studio NYK)、 「INDEX#3」(07 年、トーキョーワンダーサイト)、「横浜美術館ボランティアが出会った?若きアーティスト」 展(07 年、横浜美術館)、「DREAM of the SKULL」(08 年、山本現代)、「クリテリオム76 松宮硝子」(09 年、 水戸芸術館、水戸)など。

青木克世(あおきかつよ)
1972 年東京に生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科終了。 陶を用い多様な装飾様式や文様などを引用した、具体的または抽象的な立体物、または陶に描画し焼き付けた絵画 による表現が主体となっている。主な個展に「陶で編む夢の記憶」(00 年、INAX ガレリアセラミカ 新宿、東京)、 「白の秘儀 陶の呪文」(04 年、INAX ギャラリー2、東京)、「maniera」(09 年、ラディウム-レントゲンヴェル ケ、東京)。主なグループ展に「第6 回岡本太郎記念美術大賞展」(03 年、川崎市岡本太郎美術館、神奈川)、「VOCA展」(06 年、上野の森美術館、東京)、「Asia Ceramic Delta Project」(07 年、台北県立鶯歌陶磁博物館、台北)、「現代工芸への視点 装飾の力」(09 年、国立近代美術館工芸館、東京)、「MOT アニュアル2010:装飾」(10 年、東京都現代美術館、東京)など。

全文提供: 山本現代


会期: 2011年9月3日(土)-2011年10月1日(土)
会場: 山本現代
オープニングレセプション: 2011年9月3日(土)18:00 - 20:00

最終更新 2011年 9月 03日
 

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