棚田康司は、日本古来の木彫技法である「一木造り」を用いて、少年少女の像を制作しています。ほっそりとした肢体、表情豊かな指先、さまざまな感情を想起させるうるんだ瞳を持つ子どもたち。未熟さや脆さと同時に伸びゆく生命のしなやかな可能性を強く感じさせる表現で知られ、次世代を担う彫刻家として注目されています。本展「○と一」では、東京で開催する初の大規模個展となります。
7体の新作を中心に、スパイラルガーデンの空間全体で表現する情報や技術で割り切ることのできない、曖昧で神秘的な世界の存在
東京の街中でもそこかしこに見かける小さな祠や、石碑、神社や家々にある神棚。わたしたちは古来から人知を超えた存在を祀り、祈りをささげることで、目に見えないもの、説明のつかない現象との共生を図ってきました。しかし、高度に発達した技術、溢れる情報によって、その存在はいつの間にか私たちの意識から忘れ去られつつあります。
展覧会に際し、何度もスパイラルに足を運んだ棚田は、「建築として緻密に計算されていて、場所も青山という東京の中央にあり、人間臭さや神秘的な気配が一切ない空間。この空間に敢えて神棚や神社仏閣が感じさせる神秘性を拡大して持ち込んだら面白いと思った」と話します。エントランスからアトリウムまで、訪れた人を一直線に導く参道のごとき道。「風神雷神」をヒントに制作された一対の立像。青山通りに面した窓の向こうに広がる景色から着想を得た赤い瞳の花嫁。家々を守るように佇む少女。棚田は、曖昧で未熟であるがゆえに神に近いとされる少年少女の姿をした像7体を中心に、スパイラルガーデン全体を作品と化し、訪れた人々を情報や技術で割り切ることのできない曖昧で、神秘的な世界へと導きます。
本展では、訪れる人が作品と出会うことで、日々の暮らしの中で忘れかけていた尊さや、人々の生きる知恵に思いを馳せ、次なる一歩を進めることを企図しています。
棚田康司 1968 兵庫県明石市生まれ 神奈川県茅ヶ崎市在住 1993 東京造形大学造形学部美術学科II類(彫刻)卒業 1995 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了(深井隆研究室) 2001 文化庁芸術家在外研修員として7ヶ月ベルリンに滞在 現在 神奈川県にアトリエを構える
主な展覧会 2011 「ZIPANGU-31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン。-」日本橋高島屋 /東京 2010 「SO + ZO展 未来をひらく造形の過去と現在 1960s→」Bunkamura ザ・ミュージアム /東京 ---- 「創造と回帰 | 現代木彫の潮流」北海道立近代美術館 /北海道 2009 個展「結ぶ少女」 ミヅマアートギャラリー /東京 (2006、2004、2000) ---- 「Essential Experiences」Museo Regionale d’Arte Moderna e Contemporanea /パレルモ、イタリア ---- 「彫刻の五・七・五」沖縄県立芸術大学付属図書・芸術資料館 /沖縄 2008 個展「十一の少年、一の少女」 ヴァンジ彫刻庭園美術館 /静岡 ---- 「TARO賞の作家Ⅰ」川崎市岡本太郎美術館 /神奈川 ---- 「Off the Rails | 反主流」Mizuma & One Gallery /北京 2007 「物語の彫刻」東京藝術大学大学美術館陳列館 /東京 ---- 「場の記憶 虚実の狭間で 第三回造形現代芸術家展」東京造形大学付属横山記念マンズー美術館 /東京 ---- 「日本-メキシコ彫刻友愛展」ユカタン州メリダ、メキシコ 2006 個展「棚田康司展」 void+ /東京 ---- 「ライフ」水戸芸術館現代美術ギャラリー /茨城 ---- 「DOMANI・明日展2006」損保ジャパン東郷青児美術館 /東京 2005 「YOU or IT」(O JUN×棚田康司)ミヅマ・アクション /東京 ---- 「第8回岡本太郎記念現代芸術大賞」川崎市岡本太郎美術館 /神奈川 2004 「TOKYO STYLE」MILLIKEN Gallery /ストックホルム、スウェーデン 2003 「皮膚・身体・コミュニケート」女子美アートミュージアム /神奈川 ---- 「彫刻の身体」東京藝術大学大学美術館陳列館 /東京
受賞歴 2010 第20回タカシマヤ美術賞 2005 「第8回岡本太郎記念現代芸術大賞」特別賞
全文提供: スパイラル
会期: 2011年9月22日(木)-2011年10月10日(月)11:00 - 20:00 会場: スパイラルガーデン(スパイラル1F)
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