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吉本作次 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 1月 27日

《聖ゲオルギウスとドラゴン》2008年、麻カンバスに油彩、鉛筆 65.2 x 53.0 cm copy right(c) Sakuji Yoshimoto / Courtesy of KENJI TAKI GALLERY

「この一本の曲線を描きたいがために存在する絵画もある」と語る吉本作次氏の最近作は、雲や木々のうねり、そびえ立つ岩窟が、幾何学的にも見えるほどリズミカルに連なる幾つもの線で描かれた、線の存在感が印象的な作品。 80年代の新表現主義の流れの中で、当時若手作家として多大な注目を浴びていた吉本氏は、90年頃に一時制作や発表を中断、その後95年頃に自身の絵画に新たなスタイルを築きます。新しいスタイルは、原寸大の下絵をキャンバスに転写して作られた輪郭線と油彩の繊細な色味や質感を生かした緻密なスタイル。

一方、1980年代のスタイルと共通する身体的な動きや感情、筆致の速度や絵具自体の物質感をふんだんに見せる即興的なスタイルの絵画も同時に制作し続けています。また、1980年代よりいち早く取り入れ始めた漫画風に描かれた人物は、最近の作品でも引き続き登場しており、古今東西の絵画の様式を組み込んだ作品の中に、作家自身の絵画体験や日本の絵の原型、あるいは日本の精神性を象徴させるかのように、あえて漫画的な要素にもこだわり続けています。 吉本氏の異なる二つのスタイルの中に、吉本氏が歴史上の絵画を賞賛し参照しつつ、今の日本で生きる作家として描き得る絵画を真摯に探求し続ける、一貫した態度がより鮮明に浮かび上がります。当ギャラリー東京では初の個展となる今展では、新作を中心に、この二つの対照的なスタイルを同時に発表予定。古典的絵画の典型的な題材に、無常感を示す漫画風人物を組み込んだ吉本氏独特のユーモアにも是非ご注目ください。

吉本作次(よしもと・さくじ)
1959年 岐阜市生まれ
1584年 名古屋芸術大学美術学部絵画科卒業 1985年 個展 アキライケダギャラリー(名古屋)
1987年 「絵画1977-1987」国立国際美術館(大阪)
1989年 「現代美術の展望 - 祝福された絵画」東京都美術館 他
1996年 「VOCA展'96」 上野の森美術館
2005年 個展 三重県立美術館県民ギャラリー

※全文提供: ケンジタキギャラリー

最終更新 2009年 2月 05日
 

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