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第8回現代日本画の試み展
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 7月 09日

画像提供:現代日本画の試み展実行委員会

    現代における日本画とは何か、現代の日本画家は何ができるのかを年齢、大学、所属を越えて集まった日本画家たちが毎回それぞれの立場でさまざまな試みを実践する「現代日本画の試み展」。第8回目となる本展では、掛軸をテーマに、表具師・栗山知浩と12作家とのコラボレーションから生まれた軸装された作品が展覧される。
    掛軸とは、書や日本画を裂や紙で表装し、床の間などに掛けて鑑賞するものである(その歴史については、会場で配布されるリーフレットをご参照頂きたい)。そのため、畳に座って見上げたときに作品が美しく見えるように、建物の空間や畳の大きさ、作品との関係を考慮して掛軸は作られる。今展では、ホワイトキューブによるギャラリー空間での展示のため、座って見ることはできないが、掛軸の見方を頭の片隅に入れて作品を見ると、いつもとは少し違った見方ができるだろう。

    12作家それぞれの作品世界に合わせて生まれた掛軸は、額装やパネル展示が多い近年の日本画になかにあって伝統的な形式がもつ緊張感と安らぎがある。描かれたイメージを見るだけでなく、さまざまな裂や布を用いて作られた掛軸の美しさにもまなざしを向けてほしい。
    例えば、細く長い軸装が施された忠田愛による銅版画作品『対岸』は、掛軸の地の白と銅版画の黒のコントラストが美しい。井上雄介はコンビニを前に雑談をする女子高生を描いた『女子高生立談図』を仏画風な裂地と取り合わせた掛軸で見せる。その意外な組み合わせが現代性を感じさせる作品だ。現代日本画の新たな一面と表具の魅力を感じられる展覧会である。

最終更新 2011年 7月 09日
 

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