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進藤環:クロックポジション
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 7月 07日

《timberline》2011年 | 1200mm×900mm|type C print | 画像提供:INAXギャラリー | Copyright© Tamaki Shindo

INAXギャラリー特別企画展10daysセレクション

見たことがないのに、見たことがあるような、どこか懐かしい風景がカラフルなパノラマ図鑑のように広がっています。森、羊歯の群生、杉林、沼、松ぼっくり、浜昼顔、サボテン、珊瑚、色鮮やかな花々・・・霧に包まれ、あるいは光に満ち、迷い込む人を誘うような、うっとりと眠くなるような幻想的な世界です。

進藤環の作品は写真によるコラージュです。図鑑のように精密で写実的な植物のひとつひとつ、風景全体の調和は、撮り溜めた膨大な写真プリントをいったん、はさみでバラバラに切り刻み、ジグゾーパズルのように新たに張り合わせることを幾度となく繰り返して原画をつくり、それを再度撮影して完成させます。

それによって、誰もが知っているはずの植物や森の植生が変更され、高山植物の横に海岸の花が咲き、秋草の隣に春のタンポポが飛ぶような独特の自然世界が構築されます。

進藤環は度々旅に出て道に迷います。それは子供の頃に住んでいた市街地でも同様に繰り返されてきた行動で、その時の驚愕、恐怖の強い感情、焦燥の中での記憶と知識の混乱が、作品制作のコラージュ作業とよく似ているのだと話します。大人になっても繰り返される森や山での迷いの体験と、ひとつの作品に半年の時間をかけるコラージュ作業の繋がりから、絵画のように美しくも不思議な世界が生まれました。また接木のような育成方法のある植物は、自然界のみならず人間社会にも通じる多様な生態観を表現するのにふさわしいモチーフであることも象徴的です。

進藤環はボナールを愛し、大学で油彩画を専攻後、写真の道へ進み、記憶や時空を重ね合わせることをテーマに現在の作品を制作するようになりました。2000年頃より数々の発表を重ねてきました。今展は作家にとってこれまでで一番大きな個展の開催となります。

*展覧会のサブタイトルの「クロックポジション」とは、空間の方向を時計の文字盤に置き換えて把握する方法です。視覚障害者が空間の把握のために用いられる方法でもあります。また山で目標物が見つけられない場合、太陽の向きと時計の短針(時針)から方角を割り出すことができます。

進藤環
1974年 東京生まれ
1998年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
1999年 武蔵野美術大学大学院油絵コース修了
2006年 東京綜合写真専門学校第二学科修了

個展
2010年 「Wandering dunes」 H.P.FRANCE WINDOW GALLERY(東京 丸の内)
「湿原の砂」LOOP HOLE (東京 府中)
2009年 「動く山」新宿眼科画廊 (東京 新宿)

グループ展
2010年 「風景以前」新宿眼科画廊(東京 新宿)
2009年 「BankART妻有 桐山の家」(新潟 松代)
「Open Studio4 Kodaira Artists Site」(東京 小平)
「DYNAMITE0000」キタノスタジオ(東京 三鷹))
2008年 「食堂ビル1929—食と現代美術part4 横濱芸術のれん街」BankART1929(神奈川 横浜) 
2007年 「世界は誰のもの?」展 BankART1929 Studio NYK(神奈川 横浜)
「For Rent! For Talent! 3」三菱地所アルティアム(福岡)
2004年 「LOCALS」村松画廊(東京 銀座)
2002年 「みどりの風展」ギャラリーかれん(神奈川 横浜)
2000年 「平成12年度大学院修了制作優秀賞展」武蔵野美術大学美術資料図書館(東京 小平)

全文提供: INAXギャラリー


会期: 2011年8月1日(月)-2011年8月10日(水)
会場: INAXギャラリー2
アーティスト・トーク: 2011年8月1日(月)18:00 - 19:00

最終更新 2011年 8月 01日
 

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