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サーチプロジェクトvol.1 加藤翼:ホーム、ホテルズ、秀吉、アウェイ
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 7月 05日

画像提供:アートエリアB1

    「せーの!」
    メガホンを通して発される合図で、人々がいっせいにロープを引っ張ると大きな家型の構造体がゆっくり倒れ始める。
    これは、箱型の構造体を引き倒すパフォーマンス・プロジェクトを展開し、2010年に森美術館で開催された「六本木クロッシング2010」にも選出された加藤翼の大阪初個展である。今展では、大阪市中央公会堂前、大阪城公園、万博記念公園前で引き倒しプロジェクトが実施された。そのイベントのさなか、3月11日に発生した東日本大震災により、当初3月に予定されていた展覧会の内容を再考し、5月に延期し開催されたのが本展である。
    大きな構造体をその場にいる人々の共同作業によって引き倒す。加藤のプロジェクトをもし名づけるならコミュニケーション・アートと言えるかもしれない。見るより参加する方が望ましいだろう展示だろう。

    だが、加藤の作品には一抹の不安もある。東日本大震災による地震、津波によって家屋が倒壊、流された人々がいる現在、家屋を喚起させる構造体を引き倒すプロジェクトにどんな「希望」や「コミュニケーション」があるのだろう。大きな構造体が大音量で倒れるスペクタクルなプロジェクトは、パブリックな場ににぎわいと一体感を創出することに貢献することは理屈では理解できる。だが、参加する人々の一時の一体感の創出のため作り出される「場」に対して、長く住むための「場」が失われ、仮設住宅で一定期間の生活を強いられる人々がいる現実は、このプロジェクトの根幹を揺さぶる問題と思える。

最終更新 2011年 7月 08日
 

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