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第8回現代日本画の試み展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 6月 30日

画像提供:現代日本画の試み展実行委員会

日本画という領域は、大学やカルチャーセンターに当たり前のように存在するが、その実態は定かではない。国名を冠しておきながら、国を代表する絵画・技法として認知されているかと言えば、そうではない。百貨店で「舞妓」や「牡丹」や「富士」といった絵が額縁に入れられ「日本画」として売られているが、美術大学や芸術大学で「日本画」を学んだ若手日本画家たちがそんな作品を描くかと言われれば、多くの場合は描かないし、それを目標とはしていない。では、日本画とは一体何なのか?

一般的に、桃山時代や江戸時代の絵画は日本絵画と呼ばれ、日本画とは区別されている。明治以降の岩絵具や水干絵具を膠で溶いた絵画をひっくるめて日本画という解釈もあるが、普遍的な解釈ではない。材料でいえば同様あるいは類似の材料を用いた絵画が世界各地に存在するし、岩絵具や水干絵具にとらわれず様々な材料を使う日本画家もいる。絵の主題が日本的な絵が日本画かと言われれば、海外の風景をモチーフにとる日本画家もいる。では表現者が日本人であることが条件かといわれれば、日本国籍でない日本画家もいる。大学で日本画を学んだ人、あるいは日本画の公募団体に所属している人が日本画家かといえば、独学で日本画を習得した人、公募団体に所属しない人は大勢いる。そんな混沌とした状況の中で、若手の日本画家たちは自分たちのことをどう捉え、どこへ向かっていけばいいのか。

若手日本画家たちが抱えるその疑問に、私たちは目を向けました。現代における日本画とは何なのか、現代の日本画家は何ができるのか。実行委員長沖谷晃司の呼びかけのもとに、年齢も、大学も、所属する公募団体も一致しない面々で構成された本実行委員会は、その疑問を命題とし、「現代日本画の試み展」と銘打ち、普段の制作とはまた一歩異なった視点から、現代日本画家という立場でそれぞれが様々な試みを実践する場として、本グループ展を今年も実施します。

参加作家
井上雄介、沖谷晃司、関菜穂子、武田修二郎、忠田愛、豊永杏奈、長阪奈津子、蕚淳子、福井悠、山田紗知子、吉岡佐知、若林静香

ギャラリートーク&栗山知浩講演
「表具屋のつぶやき」7月10日(日)14:00 -

全文提供: 現代日本画の試み展実行委員会


会期: 2011年7月5日(火)-2011年7月10日(日)12:00 - 19:00(最終日 - 19:00)
会場: ギャラリーマロニエ Gallery 4
           (京都市中京区河原町通四条上る塩屋町332 http://www.gallery-maronie.com/


最終更新 2011年 7月 05日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


画像提供:現代日本画の試み展実行委員会

    現代における日本画とは何か、現代の日本画家は何ができるのかを年齢、大学、所属を越えて集まった日本画家たちが毎回それぞれの立場でさまざまな試みを実践する「現代日本画の試み展」。第8回目となる本展では、掛軸をテーマに、表具師・栗山知浩と12作家とのコラボレーションから生まれた軸装された作品が展覧される。
    掛軸とは、書や日本画を裂や紙で表装し、床の間などに掛けて鑑賞するものである(その歴史については、会場で配布されるリーフレットをご参照頂きたい)。そのため、畳に座って見上げたときに作品が美しく見えるように、建物の空間や畳の大きさ、作品との関係を考慮して掛軸は作られる。今展では、ホワイトキューブによるギャラリー空間での展示のため、座って見ることはできないが、掛軸の見方を頭の片隅に入れて作品を見ると、いつもとは少し違った見方ができるだろう。

    12作家それぞれの作品世界に合わせて生まれた掛軸は、額装やパネル展示が多い近年の日本画になかにあって伝統的な形式がもつ緊張感と安らぎがある。描かれたイメージを見るだけでなく、さまざまな裂や布を用いて作られた掛軸の美しさにもまなざしを向けてほしい。
    例えば、細く長い軸装が施された忠田愛による銅版画作品『対岸』は、掛軸の地の白と銅版画の黒のコントラストが美しい。井上雄介はコンビニを前に雑談をする女子高生を描いた『女子高生立談図』を仏画風な裂地と取り合わせた掛軸で見せる。その意外な組み合わせが現代性を感じさせる作品だ。現代日本画の新たな一面と表具の魅力を感じられる展覧会である。


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