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レオ・ルビンファイン 傷ついた街
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 6月 29日

「傷ついた街」より Manila,2005,on Taft Avenue | © Leo Rubinfien / Courtesy of Robert Mann Gallery, New York and Taka Ishii Gallery, Tokyo.

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件は、新しい世紀を迎えた世界に深い影を投げかけるものでした。その数日前に、世界貿易センタービルからわずか2ブロックしか離れていない新居に引っ越したばかりだった写真 家レオ・ルビンファイン(1953年生まれ)は、この未曾有の事件を間近で体験しました。

渦中へとまきこまれたニューヨークでの一連の事態そのものにはカメラを向けることのなかった彼が、写真家として、この出来事と向かい合いながらとりくんだのは、世界各地の都市で、街を行きかう人びとの顔を撮ることでした。 この事件がもたらした本質的なもの、つまり、物理的な破壊行為を通じて、社会に心理的打撃を与えることを目的とするテロリズムが、人びとの内面に残した「心理的な傷」を見つめるためです。

2002年から6年にわたって、ニューヨークをはじめ、ロンドン、マドリッド、モスクワ、イスタンブール、東京など、近年テロ事件の起きた世界各地の都市を訪ね、ストリートスナップの手法で撮影された写真は、2008年、写真家自身による長文の内省的なテキストとともに、『傷ついた街』(Wounded Cities, Steidl刊)と題される写真集へとまとめられました。

今回の展覧会は、アメリカ各地や中国などで、かたちを変えながら開催されてきた「傷ついた街」展を日本では初めて、未発表の作品を含む35点による新しい構成で開催するものです。同時多発テロからちょうど10年という節目 の年に、世界は新たな事態を経験してもいます。世界各地の街角で撮影された人びとの表情に浮かび上がる心理的な陰影に、同時代を生きる私たちへのメッセージを探ります。

レオ・ルビンファイン Leo Rubinfien
1953年アメリカ、シカゴ生まれ。リード・カレッジ(英文学専攻)、カリフォルニア・インスティテュート・オブ・アーツ(写真専攻)、イェール大学大学院(写真専攻) などに学ぶ。1970年代末に写真家として活動を開始。当時「ニュー・カラー」と呼ばれた、カラー写真による新しい表現の潮流の、最も若い担い手のひとりとして評価され、以後、アメリカを中心に、多くの個展、グループ展で作品を発表する。また写真や美術を中心とした評論・執筆活動でも知られる。

少年時代に数年間、東京に暮らしたこともあり、日本とのかかわりも深く1993年には西武アートフォーラムで個展を開催。2004年にサンフランシスコ近代美術館/ジャパンソサエティ(ニューヨーク)が企画・開催した東松照明展(Shomei Tomatsu: Skin of the Nation)では共同企画者として調査・カタログ文章の執筆を担当している。

写真集に『A Map of the East』(Thames & Hudson / 都市出版, 1992)、『Wounded Cities』(Steidl, 2008)、『The Ardbeg』(タカ・イシイギャラリー+空蓮房, 2010)など。

全文提供: 東京国立近代美術館


会期: 2011年8月12日(金)-2011年10月23日(日)
休館日:月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)
会場: 東京国立近代美術館 ギャラリー4(2階)

最終更新 2011年 8月 12日
 

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